もしも星屑本編が双子設定だったら
※どっちともできてない
※でも双子は妹が好き
※零は本編同様キスして出てった
※透はずっと側にいて妹の転勤を機に共にお引越し
※本編同様喫茶店で出会うけど、和解済みな謎時空
※双子ということを隠しつつ安室透という1人の人物を2人で演じている双子
※いつもの双子シリーズのノリ

ーーーーーーー

「ねぇ、兄さん流石にこれはまずいんじゃ…」
「どうして?」
「零兄さんの仕事の関係とかさ」
「どうせ喫茶店でも雫にちょっかいかけてるんだから外でデートしてたっておかしくないよ」

そう言ってご機嫌に私の髪にキスをする透兄さん。
何故か今私は透兄さんとデートいう名のただのお出かけをしていた。
透兄さんは2人で出かけるのを必ずデートって言うから勘違いされるんだよなぁ。
透兄さんは私立探偵をやっている関係もあってか、零兄さんの仕事を手伝っている。
安室透という人物になって喫茶ポアロで働く零兄さんは、まるで透兄さんの人格を真似しているようだった。まぁね、名前借りてるしね。
昔は透兄さんが零兄さんの真似をしてたのに、今では零兄さんが透兄さんの真似をしていると思うと不思議な気分だ。
たまに透兄さんが喫茶店に出ていたりもするみたいだけど、危険な仕事ということもあって私には詳しいことは話してはくれないけど、でも双子が協力し合っているのなら大丈夫だろう。
なんたってこのお兄ちゃん達は人間離れしてる上に殺しても死ななそうだしね。
1人でも凄いのにそれが2人ってことは2倍だから最強だ。

「でも安室透と付き合ってる訳じゃないのに流石にやりすぎじゃない?」
「付き合ってなくてもいつもしてるだろ?」
「う、まぁ…でも私安室透苦手なんだけどな…」
「雫は僕より零がいいの?」
「…その顔ずるいからやめて」

小首傾げて上目遣いとか平気でやってのけるこのアラサーが憎い。
腹立つほど憎い。
どうしてそんなに似合うんだ。
透兄さんはあざとさが搭載されている。
…これを軸に安室透を演じる零兄さんは、同じようなことするんだろうか…いや、してるな、絶対。だって安室透演じてる時の零兄さんはあざとい。それはもう透兄さんかって位あざとい。
…零兄さん、ストレス溜まりそうだなぁ。
透兄さんと違って零兄さんは透兄さんの真似するの楽しくはないだろうし。
なんであんな人格チョイスしちゃったんだろう。
今度家に来たら沢山慰めてあげよう。

「もしかして零のこと考えてる?」
「え、なんでわかったの?」
「お兄ちゃんは雫のことなら何でも分かるよ」
「なにそれこわい」
「雫って零にはあんなに甘えるのに僕には冷たいよね」
「過去にした行いを振り返って下さい」
「でも僕は零みたいな事は絶対にしないよ」

キスだけをして私の前から去ったきり、十年近くもの間会うことが出来なかった零兄さん。
連絡すらつかなかったこの十年近くは、生きた心地がしなかった。

「…もう、あんな思いはしたくないなぁ」
「2度目はないよ。あの馬鹿も反省してるし、僕は絶対にしないから」

額にキスをして笑った透兄さんに、私はずっと救われてきた。

「だからって人目のつく場所でキスはどうかと思うんだけどね」
「駄目?」
「駄目でしょ。もし知り合いに勘違いされたらどうするの」
「安室さんとお付き合いしてますって言えばいいだろう?」
「よくないねぇ?」

何考えてるのか、怒ってもかわいいよ。と訳の分からないことをのたまって、今度は唇へとキスを落とされた。
不意打ちをつかれたそれに驚いていれば、視界の隅に見つけた見覚えのある顔が2つ。
…蘭ちゃんと園子ちゃんだった。
あ、もうだめだ。終わったな私。
興味津々かつ人様のキスシーンに顔を赤くした乙女達はこちらに来ることなく、コソコソと何やら楽しげに話してから何処かへ行ってしまった。
成程、デート邪魔しちゃ悪いとかそんなところか。で、後日根掘り葉掘り聞こうってか。
透兄さん許すまじ。

「…透兄さんなんて嫌いだ」
「じゃあお詫びにクレープ買ってあげるよ」
「食べ物でつるのやめてくれません?」
「いらないの?」
「食べる」

くっそう、いつもこのパターンで丸め込まれてる気がするぞ。


ーーーーーー

「で、結局昨日はどこまでいったのよ?」
「本当に付き合ってないんですか!?」

現在私はというと、案の定乙女二名に詰め寄られていた。
わざわざ喫茶ポアロに呼び出すあたり、抜かりないなこの子達。
大方安室透本人にも確認しようということだろう。
しかしながら本日ここに出勤してくるのは零兄さんの方だ。
透兄さんは探偵業で県外行くって言ってたし。

「おや、皆さんお集まりで何のお話ですか?」
「「安室さん!」」

あーあ、来ちゃったよ。第2の獲物が。
零兄さんは昨日のお出かけの話は知らないし、聞かれても分からないだろうからこの話題は何としてでも避けたい。
あとなんかバレたら後が怖いような気がする。悪いことは何もしてないけど、私の経験がそう言っている。

「二人共、安室さんは仕事中だから巻き込んだら駄目だよ」
「お客さんも少ないですし良ければ聞かせて貰えませんか?」

安室透め…もとい零兄さんめ。
完コピかな?ってくらい透兄さんが浮かべそうな顔と仕草で入り込むあざとさよ。

「実は私たち、昨日雫さんと安室さんがデートしてるとこ見ちゃったの!キスもしてたし!」
「やっぱりお2人はお付き合いしてたんですか!?」
「…キス、ですか」

ちらり。
何故か責めるような視線が私に向けられたが知らんぷりを決め込んだ。
違うんだ、あれは透兄さんがいきなりしてきたわけで、私がしたくてした訳じゃない。
っていうか私なんも悪くない!!
責めるなら透兄さんを責めてほしい。

「雫さんっていつも安室さんのこと苦手とか言ってますけど本当はただの照れ隠しだったんですね」
「こんなイケメンの彼氏居るくせに黙ってるなんて、雫さんも隅に置けないわね!」

違うんです、説明を、説明させてください。くそう、透兄さんめ、ややこしいことするだけしておいて後片付けはしてかないんだから…!

「そうなんです、お2人もご存知の通り雫さんは照れ屋なのであまりからかわないであげてくださいね」
「はーい。でもほんとラブラブよねぇ。イチャイチャしてたかと思えば外でチューまでしちゃって!」
「ほんと、お似合いのカップルって感じでしたよ!」
「イチャイチャだなんて照れるなぁ…ねぇ、雫さん?」

怒ってる。これ絶対怒ってる。
ニッコリと満面の笑みだけど、これは零兄さん完全に怒ってる。
何やってんだお前。って心の声が聞こえる。
違うよ、透兄さんが悪いんだよ!

「じゃあそんな素直じゃない雫さんに沢山素直になってもらうためにも、今日は一緒に帰りましょうか」

キャーと黄色い声をあげる女子高生2人とは反対に、恐怖から叫び声をあげたかった。
まぁ無理なんですけどね!怖すぎて頷いちゃったよね!!

ーーーーーーー

「で?」
「…で?と言われましても…」

現在車内で威圧感ダダ漏れのお兄様に笑顔で問い詰められています。
怖い。むっちゃ怖い。
何が怖いかって、普段こんな怒り方をしない人が笑顔で怒ってることが怖い。
零兄さんいつもはこうじゃないじゃん!なんで安室透引きずってんの!?

「イチャイチャデートした上にキスとはいつの間に透とそんな関係になったんだ?ん?兄ちゃん初耳だからちゃんと説明してくれないと分からないな」

…怖すぎて泣きそう。

「透兄さんがいきなりしてきたんだもん。っていうかキスなら二人共してきたじゃん!いつもしてくるじゃん!なんなら私ちゃんと注意したもん!私悪くない!」

そうだ、私は何も悪くない筈だ。
っていうか零兄さんだってキスしてくる癖に怒る意味が分からない。理不尽だ!
開き直ってそう言えば、赤信号で止まった兄さんがこちらを向く。
…え、顔近くない?

「…っ」
「これでお説教は無しだ」

わざとリップ音たてて離れていった横顔は上機嫌だった。

「…もうやだこのお兄ちゃん達」
「素直じゃない口は塞ぐけどいいのか?」
「何その理不尽なルール」
「降谷家のルール」
「聞いたこと無いんですが」
「今俺が決めたからな」

もうやだこのお兄ちゃん。
とは心の中で呟いて口を両手で覆った。
多分これ泊まってくだろうな。
透兄さんが外泊なのをいい事に、やりたい放題やってくのだろう。
…仕方ない、好きなだけ慰めよう。
きっとそれが降谷家の妹の役目だろうから。
そして後日、この件を知って拗ねた透兄さんを慰める羽目になることをこの時の私はまだ知らない。






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