「ポッキーゲームをしろ、か…楽勝なやつだ!」
「ベタな司令だな」
ベタとか言うな!
ポッキーゲームってやった事ないけど折れたらそこで終わりだし、ポッキーもたべれるし、それだけで出れるのならハイ喜んで!って感じだ。
「兄さん、ポッキー以外にもイチゴのやつとかプリッツもあるよ」
「ノリノリだな」
「まぁ、お菓子食べれるし…もったいないから持って帰ってもいいのかな」
いいんじゃないか。という投げやりな言葉を返されながら、使用するポッキー以外はすべて持ち帰る事にした。
病院に来る子供たちにも分けてあげよう。
お菓子のバリエーションは多ければ多いほど受けがいい。
「じゃあポッキーゲームしようか。兄さんはチョコ側と何もない方どっちがいい?」
「雫が好きな方選んでいいよ」
「じゃあチョコ側にする」
どうせすぐ折れるだろうし、だったら少しでも好きな方食べたい。
チョコ側をくわえて差し出せば、何故か頬に添えられた手。
あれ、ポッキーゲームって別にそこまでしなくてよくない?なんで顔固定された?
そうは思ってもポッキーを落とすわけにもいかないので、大人しく兄がくわえるのを待つ。
…ポッキーって結構短いんだなぁ。
じっとこちらを見つめる瞳になんだか恥ずかしいような、そんなむず痒い気持ちになる。
ぱき、ぽき、と少しずつ折らないように食べ進めながら近づいてくる顔。
私も食べたいのに両頬に手を添えて固定されているせいで動くことができない。私もポッキー食べたいなぁ…と思っていると、いつの間にか鼻先が付くほどの距離にいた整ったお顔。
…まつげ、ながいなぁ。
その下に覗く青みがかった瞳はまるで宝石みたいに綺麗で、目が反らせなくなる。
吸い込まれるような綺麗な瞳。この目でじっと見つめられるのは、恥ずかしいけれど嫌ではない。
見入っていると一気にその距離が縮められ、唇に触れた感触。
「…ん…っ」
ちゅ、と音を立ててから、離れ際にぺろりと唇を舐められた。
「最後のが一番甘かったな」
「兄さんっ!」
「そう怒るなよ。そういうゲームだろう?それともまだ取れきってないチョコ、取ってあげようか?」
唇の熱でとけてくっついたチョコが付いているのか、そう言って私の下唇に指を添えた兄さんの顔は、獲物を前にしたオオカミみたいだった。
この顔はしっている。
ベッドに転がされた時に見るのはいつだってあの顔をした兄さんと天井だ。
「チョコだけで済む?」
「雫はどう思う?」
「このオオカミさん言うこと聞かないからなぁ…」
「その代わりと言ったらなんだが、ここに好きなだけ傷を付けてくれて構わないよ」
私の両手を背中にまわして笑ったオオカミは、どうやら相当はらぺこらしい。
「食べられる前に食べてやる」
そう言って今にも舌なめずりをしそうな唇に食らいついてやった。
「…これはまた随分と食べ応えのありそうな赤頭巾だ」
ドアの鍵はとっくに開いているのに、オオカミの食事が先らしい。
「ちゃんといただきますしなきゃ駄目だよ?」
挨拶代わりのキスが食事開始の合図となった。
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