以前に引き続きなんでもありのギャグ時空
細かいことは気にしない方向け

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「…母性に目覚めたかもしれない」
「…は?」

突然の言葉に思わず自分でも間抜けな声が出たとは思ったが、なんでだろう。と悩ましげに顔を歪める顔は本人でもよく分かっていないらしい。

「その考えに至った理由は?」
「…自分でもどうなんだろうとは思うんだけど、最近安室透が可愛いと思えるようになってきた」
「…は?」

安室透が可愛い?
俺が安室透として声をかけていた時はあんなに塩対応だったのにか?

「はあ!?」
「いや私だってそう思うよ!?思ってるよ!?でもさぁ、あれはずるいって!!」
「ずるいってなんだ、俺の時は散々塩対応だったろ!?」

なんで分裂してから安室透が可愛く思えるんだ!?おかしいだろ!と叫べば雫もまた同じように「わかんないから悩んでるんだよ!」と声を荒げた。
だってお前、私が好きなのは降谷零だからってあんなに言ってただろ。

「だってなんか甘え上手なんだよあの人!たまに子犬みたいに見える時があるんだよ。どういうことなの」
「俺が知るか」
「だって元は降谷零じゃん!兄さんがバリバリ演じてた人じゃん!」
「分裂してからは俺の管轄外だ」
「じゃあもう仕方ないよね」
「…まて、何が仕方ないんだ?」
「気づけば絆されて膝枕くらいはしちゃっても仕方ないよねっていう話」
「良くないな?」

何故そうなった。

「だって拗ねた時の顔とか甘やかしたくなっちゃうんだよ…あれ計算なのかな…もうよくわからなくなってきた」
「計算に決まってるだろ!?安室透だぞ!?」
「元は自分が演じていた人格なのに凄い言い様だね」
「だからこそだろ」

にこにこ笑っていても上辺だけなのは分かりきっている。
そしてその下にある下心もだ。

「あれ、今日は零が来ているんですね。別に来なくていいのに」

余計な言葉を付けて現れたのは安室透だった。

「こっちの台詞だ」
「まって、鍵かかってたよね?なんで居るのかな?」
「愛の力で扉くらいいくらでも開きますよ」
「鍵こわしてませんよね!?」

にっこりと笑って言い切った安室透に勢いよく立ち上がって玄関へと走っていく雫。

「あんまりちょっかいかけるな」
「安室透はこういう性格でしょう?」

裏の読めない笑みを浮かべるその顔はよく知っている。

「ねぇ兄さん、ピッキングの場合ってドア壊れるかな?なんか普通に開けられたっぽいんだけど」

そう言いながら戻ってきた雫は確認して欲しいと俺の腕を引く。

「残念だが雫が求めるのはいつだって降谷零だ」
「…ほんと、腹の立つ男だ」
「お前に言われたくないさ」

兄さん早く!と急かす声に腰を上げれば、まぁだからって引きませんけどね。と呟く男の指にはいつのまに作ったのか合鍵がぶら下がっていた。
…ああ知っていたさ、お前はそういう男だろう。
きっとバーボンも同じものを作っているに違いない。

「雫、鍵変えた方がいいぞ。あとチェーンは必ずしろ」
「え、なんで?」
「狼に食べられたく無ければ大人しく言う事を聞くんだな」
「まってなにそれ怖い」

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鍵変えてチェーンしたところであの二人には痛くも痒くもなさそうですね!
起きたら真っ先にバーボンか安室透の顔を見る率が上がってたりなかったり。
夜忍び込んでちゃっかり隣で寝る安室透とバーボンがいるはず。
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「えっちいのはよくないと思います!」
「つれないなぁ」
「っひ…ちょっ、撫でるのやめて…!」

組み敷いた華奢な体に手を伸ばし、その腰に指を這わせれば可愛らしく声を震わせる。

「っ、ねぇっ!もういいでしょ…っ」

ぴくりと体を震わせて、涙を滲ませた瞳が僕を見上げる。

「全然?」

そう、全然足りない。
ただ腰を撫でるだけでは、指先で触れるだけでは、全く足りない。

「あわよくば貴女の全てが欲しいんです。勿論安室透だって同じ気持ちだ。そんな僕がたったこれだけでいいわけがないでしょう?」

こんなもので足りるわけがない。
その白い頬を赤く染め、バーボン、と切なげに僕の名を呼んで欲しいと思うのは当たり前の事だ。

「…っ…ん…だからぁ…っ、そういうのやだ…っ!」
「本当に?」

だってこの姿は貴女の大好きな降谷零と何も変わらない。
なのに彼はよくて僕は嫌なんておかしいじゃないですか。
耳元で囁けばかかる吐息がくすぐったいのか身を捩るその体を抑えつけて、鼻先が付きそうな程の距離で見つめれば彼女はよくないよ。と真っ直ぐに僕の目を見て断言した。

「例え降谷零が演じていた人格だったとしても、私が好きなのは降谷零だけだから。私の兄も降谷零だし、好きなのも降谷零。だからよくない」

ああそうだ、僕らはそんな風に言い切る彼女が好きなのだから救えない。
そんな彼女だからこそ降谷零は彼女を愛し、僕らもまた同じように愛している。
ただ同じ愛を得られるのは降谷零だけ。

「…狡いなぁ」
「じゃあ早く降谷零に戻りなよ」
「それができたらこうはなってませんよ」
「そりゃそうだ」

すっかり主導権は彼女へと移ってしまったらしい。
今ではくすくすと楽しそうに僕の下で笑う彼女に危機感はない。

「ほんと、狡い人だ」
「それ安室透にも言われた」
「でしょうね」

僕らの彼女への思いは同じだ。
だから安室透が同じ事を言っていても何も不思議ではない。
違うのは降谷零だけ。
選ばれるのは彼と決まっている。
分かっていても僕らは彼女に手を伸ばす。

「僕を選んでくれたらいいのに」
「降谷零になって出直してください」
「これはまた手厳しい…それじゃあ今日はこれで勘弁してあげましょうか」

無防備な唇に触れるだけのキスをすればさっきまでの笑顔は何処へやら。
驚いた顔でこちらをみる姿は悪くない。

「…これ浮気になるのかな」
「さあ?元は同じ人間ですし、セーフでしょう」
「兄さん知ったら絶対怒るやつじゃん」
「それじゃあ零とじゃなく僕と二人きりの夜はいかがです?」
「それはそれで怖いんで遠慮しておきます」

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これを知った兄が笑顔で青筋立ててお説教&夜は長いよコースに突入する。
多分翌日動けないレベルになって、そこにバーボン&安室透が来て「もういい、浮気してやる兄さんの馬鹿!」って怒る妹と、両サイド陣取ってドヤ顔するバーボン&安室透がいる。
恐らく安室透は嫌って言われたらちゃんとやめてくれる。大きなため息吐いてから「そんなにはっきり言われたら無理にできるわけないじゃないですか」って甘えるように抱きついて諦めてくれそう。
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安室透はあざとい。
誰がなんと言おうとあざとい。
異論は認めない。

「…やめて。そんな顔したって駄目なものは駄目だからね」
「本当に?」
「だから!その顔を!やめてください!」
「ならちゃんと僕の目を見て言ってください」

ね?と甘い顔した安室透がこちらに手を伸ばす。
待って待って、多分私その顔はだめ、本当だめなんだって!

「雫」

それは安室透がたまに見せた降谷零のようで、胸が苦しくなる。
普段はさん付けで呼んでくるくせに、安室透は降谷零の皮を被って私を呼ぶ。
くらくらと脳を揺さぶるような甘い声で、再度私の名前を呼ぶ。
雫。
心地いいあの声で。

「それ以上やったら二度と口利かないから」

そんなずるい真似をする男の相手など誰がするものかと言い切れば、ちぇっ、と一言呟くベビーフェイス。

「…あっざといなぁ」
「安室透はそういう人ですから。今更でしょう?」
「ですね」

にこにこと笑みを浮かべるのは私がよく知る安室透の顔だった。
そこに降谷零はいない。

「悪趣味だからもうやめてね」
「だってこうでもしないと貴女は揺らがないじゃないですか」
「私のことそんなに好きなの?」
「…よくそんな事をそんな真顔で言えますね」

待って、私の知る安室透はそんな顔しないんですが。
本気で呆れたと言わんばかりの顔は降谷零の面影を感じる。
特撮ヒーローの写真集を握手会チケットゲットの為に買い込んだ時に見た顔だそれ。

「安室透やバーボンでは貴女を想う気持ちすら伝わらないなんて」
「降谷零からしか受け付けません」
「それは僕らを彼が演じていたからでしょう?今の僕らは独立した存在なのに、貴女はそんなひどい事を言う」
「だって兄さん一筋だもん」

ヒーローは?の問いは聞かなかったことにした。
それとこれとは話が別だ。

「でもほら、特撮ヒーローとかにいそうな顔だとは思ってるよ。悪の組織あたり」
「それはバーボンでしょう?」
「たしかに、バーボンにはハマり役だろうね」

ほんの少し拗ねた顔を見せる安室透は、兄が演じた時には見たことの無い顔だった。

「なんか私の知る安室透よりも子供っぽいね」
「貴女のせいですよ」
「もっと大人だった気がするんだけど」
「それは零が演じていたからでしょう?僕らから降谷零の要素を抜いたらこうなるんです」
「へぇ、まるでゴールデンレトリバーみたい」

ソファーに座る私の膝に頭を寄せる姿はまるで大型犬だ。
さらさらと指通りのいい髪を撫でれば、もっとと言うように擦り寄られる。

「本当に犬みたいだよ?」
「貴女の犬なら悪くないですね」

顎先を撫でれば気持ちよさそうに目を細めてそう返した安室透は、やはり少しだけ、ほんの少しだけ可愛くみえた。

「これが母性か…」
「僕との子供が欲しいんですか?」
「おかしいな、安室透の耳は呪われてるのかな?そんなこと一言も言ってないね?」
「あれ、てっきりそういう意味かと…」
「やっぱ可愛くないや。ごめん私の気のせいだ」

兄さん、やっぱり安室透が可愛く思えるって発言撤回します。
あとこの人大型犬なんてものじゃない、狼だ。

「それで、もう触ってくれないんですか?」

がっちりと腰に回された腕は、まるで逃さないと言わんばかりに巻きついて離れない。
にこり。
女子高生達に黄色い悲鳴をあげされる安室スマイルも、私からしたら恐怖の悲鳴をあげたくなるものだった。

「に、にいさーん!助けて兄さん!!」
「残念、零はお仕事ですから」
「というわけで代わりに僕で我慢してください」

ひょっこりと姿を現したのはバーボンだった。
…呼んでない…呼んでないよ…むしろ状況は悪化したよねこれ。狼が二人に増えただけだよねこれ。
じわり、涙が浮かんだのが自分でもよくわかった。
これ、ガチのやばいやつですね。

「「じゃあそういうことでいいですよね」」
「何が!?」

兄さん、貴方が生み出したこの二人、責任取って引き取ってください。切実に。
迫り来る胡散臭い笑顔の二人にある意味死を覚悟した。

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おいしくいただかれたかどうかは本人達のみ知る。
でもあまりにも特撮ヒーローに夢中でトリプルフェイスを相手にしなかったらこの三人は手を組むと思う。
そんなときだけ仲良くなりやがって…!という妹の叫びはきっと届かない。というか聞いちゃいねぇな流れで三人に迫られて泣くと思う。
結局は同じ人だったからそりゃ気が合う時はあいますよね!
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