○甘噛みしながら上目遣い
ぬるいR15



「甘噛みしながら上目遣い…か。ほら、おいで」
「…何でナチュラルに腕を広げているの?」

完全に私がやる側で決定ですね!
まぁやるけど。やるけどさ。
やけにご機嫌な兄に言われるがまま近づいて、膝立ちの状態で座ってその顔を見上げた。

「雫?」
「上目遣いで甘噛みってことは、下からじゃないとできないし、キスしながらは難しいから手、貸して」

何処をとは書いていなかったみたいだし、手でも甘噛みして兄さんの顔を見上げればいいだろう。
どうするか察した兄が、親指で私の唇をなぞるように撫ではじめた。
私を見下ろすその顔は、なんというかこう…なんだろうな、何かのスイッチ入ったな、兄さん。
口元に微かに笑みを浮かべながら私を見下ろす兄さんの表情は、確実に普段とは違う顔だった。
甘い空気を感じ取って、唇を撫でる指を咥えるのを躊躇してしまう。

「…雫」

優しいのに甘ったるくて、なのにまるで咎めるような声。
完全に何かのスイッチが入っていた。
ぞわり、と背筋を這い上がる何か。
この空気に当てられたらたまったものじゃない。
下手をしたらぺろりと食べられかねない空気に、さっさと終わらせて此処を出てしまおうとその指を咥えることにした。
頬に手を添えながら親指で撫でる兄の右手を両手で掴んで、下からじっと見上げるように今にも蕩けそうな位、甘ったるい色をした瞳を見つめる。

「…っ…ふ…ぁ」

ゆっくりと唇で挟んで軽く歯を当てれば、舌の上をゆっくりとなぞる指に気の抜けた声が溢れでた。
…ドアはまだ開かない。
自分からも舌を押し当てて指を舐めれば、もっと、と声が落とされる。
これでも駄目ならいっそしゃぶるしかないのだろうか。
第1関節まで咥えていた指を更に奥まで咥えようと口を開けて、付け根まで口に含めば、指先が喉に微かに当たってすぐに引き抜いた。

「大丈夫か?」
「…うん…大丈夫…」

今度は横から付け根を食むように唇ではさんで舌で舐めあげる。
深いキスをする時みたいに、何度も何度も口付ければ静かな空間にその音だけが響いて、それだけで頭の中がとけていくようだった。

「…ん…っ…ふ…っ…んぅ…っ」

ちゅ、ちゅ、と甘えるようにキスをして、指を咥えて、しゃぶるように舌を這わせる。

「…雫、ちゃんとこっち見ないと駄目だろう?」

手に集中しすぎてしまい、上目遣いの司令を忘れていたらしい。
指を咥えて見上げた先には、まるで獲物を捕らえて舌なめずりをする狼の顔。
…これ、食べられちゃうなぁ。
ぼんやりする頭に浮かんだのは、そんな言葉だった。
指を引き抜いて近付く兄の顔。
薄く開いた口は、きっと私の唇を食べる気なのだろう。
ぱくり、と優しく下唇に噛みつかれた瞬間、ドアの開く音が耳に入った。

「…にいふぁ…っん…ふ…っ」

兄さん、開いたよ。と言いたかったのに、そんなことお構い無しに唇を貪るようにキスをされる。
差し込まれた舌が無遠慮に絡みついて、何度か舌を吸ってはまた唇を食むようにキスをする。
…ああ、もうこれ無理かも。
後ろへと傾いていく体と覆いかぶさる兄と真っ白な天井。

「…っん、ふぁ…っ」
「…はぁ…っ」
「…さいごまで、きれいにたべてくれる…?」
「…ああ、残さず平らげてやるから安心しろ」

ならいいや。
余すことなく食べ尽くしてくれると言うのなら、どうぞ召し上がれ。







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