ある日、降谷さんが三人になってました。

「ふ、降谷さん降谷さん降谷さん!!」
「うるさい」
「いやだってなんですかこの状態どういうことです?助けて降谷さん!」

口調も顔も鬱陶しそうにしてるけど、背中にしがみつく私を引っぺがさない降谷さんはやっぱり私の飼い主である。
慣れっこですね降谷さん!
でもこの状態は慣れるの無理です!

「僕も名前さんともっと仲良くなりたいんですが…ダメですか?」

なんっだあのあざとい系29歳。
困ったように笑いながら首を傾げるなんてことが許されるのは二十代前半までだからな!!
あれはおそらく私の苦手な安室透だ。
なんでお前ポアロのエプロンしてんの?
ここ私の家ですけど?
むしろ何故居る何故三人居る。

「そんなところに隠れていないで、ちゃんと出てきたらどうなんです?」
「出たな性格の悪い降谷さんことバーボンめ!…あれ、でも降谷さんも別に性格いいわけでもないしな…」
「名前?」
「嘘です嘘です降谷さん大好き!!だからやめて引っぺがさないであの二人の前に押し出そうとしないで!!!」
「だそうだ。諦めるんだな」

ドヤ顔降谷さんはやっぱり嘘でも性格がいいとは言えな…いやすみませんなんも思ってないですご主人様が一番いいです。
なんでこの人喋ってないのに勘付いてるの?怖いんだけど。

「そこの彼が名前さんのご主人様なら、僕が恋人になってもいいですよね?」

よくないですよね?
笑顔で何言ってんだこのイケメン。
いやここに居る三人みんな同じ顔だけど!!

「僕は彼女の肌も見ましたし、責任を取るだけの甲斐性はあるつもりですよ」

いや、あれ応急処置の為に脱いだだけだし。下着着てたし。

「ていうか三人とも結局は降谷さんなんだからいいじゃないですか」
「お前な…」

同一人物なんだから仲良くしろよ。

「そうですね、僕達三人の名前さんでもすんね」
「じゃあいいですよね?」
「…仕方ない、本人がそう言っているからな」
「おっと、降谷さん三人の威圧感パネェぞ…まってまって、なんで三人でこっちくるの?ねぇ、ちょ、おいこらやめろ押し倒すな!!」

背後に回ったバーボンに体を引かれ、前からは安室さんが爽やかスマイルで押し倒してくる。
ねぇちょっとこの展開よくわからないんですけどねぇたすけて。

「お前が選んだんだ。文句はないよな?」

にっこり笑顔の降谷さん。心なしか怒ってるようにも見えるのは気のせいでしょうか。

「「「返事は?」」」
「…わ、わん…っ」

ご主人様が増えました。


ーーーーーー

「…っ!?」

がばり、と勢いのまま起き上がれば、そこは私のベッドで、見下ろせばいつものスウェット姿。

「…ん…なんだ、もう起きるのか?」

隣から聞こえた声に視線を落とせば、少し眠そうに目を細める降谷さんの姿。
…そういえば宅飲みしてそのまま寝てたんだ。

「…ゆめ?」
「寝ぼけてるのか?もう少し寝てろ」

どうやら夢オチだったらしい。
いやほんと、怖かった。

「…なんだ、やけに甘えるな」
「降谷さんは一人でいいです」
「何言ってんだお前」

私の飼い主は一人だけでいいです。






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