父と亡き母の正義感のある人になって欲しいという言葉の元に、高校を卒業した私は警察学校に入っていた。
正直体力はチート並で実技も筆記も勝手に体が動いてくれるレベルでやはりチートなので、変に目をつけられるのも怖いので教官に指示されたこと以外は手を抜くことに全力を尽くしていた頃。

「やっぱりお前だったか」
「はい?」

体力ダウンで飯を食う気力がないとへばる友人を放置して、食堂の片隅で一人うどんを頬張っていると聞き覚えのある声が降ってきた。
いやそんなばかな。

「…おい、まさか忘れたとは言わないよな?」

高校時代、私が全力でテストをするきっかけとなった先輩が私を見ていた。
え、なんでこの人居るんです?
いやいや、嘘だと言ってよバーニィ。
思わずぽかりとアホ面を晒してしまったが、まずい、早く反応を返さないと怒られる。


「あ、降谷先輩!」
「…お前は本当にポンコツだな」
「なんで久々にお会いして暴言吐かれてるんです?」
「お前があいも変わらずアホだからだよ」
「いやこれでも私中々に優秀ですけど?」
「知ってる」

やはりそこに居たのは紛れもなくイケメンパーフェクトガイの降谷先輩で、再会早々ディスられた。
私に対して息をするように悪口言うのどうかと思います。
そしてふとこの先輩がいるのならアドバイスを貰うべきだと思い立ち、悩んで居たことを相談することにした。

「警察学校って、全部いい成績の方がいいんですかねぇ」
「は?何言ってんだお前は。当たり前だろう」
「そういうものですか…うん、じゃあ私頑張ります」

成る程、流石パーフェクトガイな先輩である。
きっと学生時代同様、常にパーフェクトな結果を出して一目置かれる存在なのかもしれない。
ぶっちゃけ周りに興味なかったから噂話とか一切気にしてなかったけど、絶対噂になってるだろうな。

後日、全力で頑張ったにも関わらず手を抜いて居たと説教くらったことに関しては完全なる言いがかりであるとここに主張したい。
恐ろしくて本人には言えませんけどね!!
たとえ体力チートでもメンタル絹ごし豆腐だから無理です。

卒業後、配属先でこの人が上司と知ってアホ面を晒すこととなるのは言うまでもない。
もしかしたら初めて会ったあの時から見えない手綱を握られていたのかもしれない。
なんて笑えない冗談である。
いや本当に。



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