「起きろ駄犬っ!」

友人の腐女子トークにうなされていると、救いの声によって視界が変わった。
どうやら完全なる悪夢だったらしい。
視界に映ったのは意識を失う前にみたライではなく、鬼気迫る顔の上司だった。
あちゃー、バレテーラ。
いや、まぁあれだけのことやって生きてる私の状態が幹部の耳に入らないわけがないよね。
号泣してる時じゃなくてよかった。
え、ていうかこの人駄犬って言った?
ねぇ駄犬って言った?
本名呼ばない為ならコードネームでよかったじゃん。
なんでそれチョイスしたの?
私の人権いつになったら帰ってくるの?もう何年も家出してるよ?


「よかった…」

とりあえずほっとした顔の上司に言いたいことがある。
呼吸器の中でもごもご口を動かすのが分かったのか、耳を近づかせてそっと外される。

「…ほも…ですか…?」

掠れる声で絞り出したのはそんなクソみたいな台詞だった。
いやほんとすみません。
まともに動けるようになったら土下座するんでそんな形容しがたい顔で見ないでください。ほんとすみませんって。
それもこれも不要な知識ぶっ込んできた前世の友人のせいである。
同人誌で説明されなかっただけマシだけど。

「…ほんと…お前は相変わらずのアホだな」

顔面片手でおおって深い深いため息の後、疲れ切ったように吐き出されたのはそんな言葉だった。

「元気になったら今の言葉、忘れないでくださいね?」

にっこりとバーボンの顔で笑った上司に死を覚悟した。
もう二度と言わないので許して。



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