恐ろしい上司の言葉に再び意識を失うように寝こけて目を覚ました時、視界に映ったのはライだった。
「あれから丸3日寝た気分はどうだ?」
え、うそ3日も寝てたの?
これ有給出るのかな…あれ、歩合制だっけ?なんてどうでもいいことが頭をよぎる。
友人のせいで攻めキャラのイメージになり掛けてるのを必死に振り払い、口を開こうとして呼吸器の存在に気づいた。
「もう外して大丈夫なのか?」
「…み…ず…」
多少痛みはするものの、腕は動くらしい。
3日も寝てるとここまで回復するものなのか。
からっからの声で要求すれば、直ぐに察したのか水差しをもってきてくれたライ。
「ゆっくり飲め」
ベッドを起こして頭を支えられながら水を飲まされる私の姿大丈夫?情けなくない?
自分で持てると腕を伸ばせば大人しくしてろと注意されてしまった。
はい、すみません。
「…ん…ありがと」
「気にするな。あれだけの怪我で生きていた方が奇跡だからな」
ライの口振りから私相当な怪我を負っていたと察した。
ジンまじふざけんなよ。
「…組織は」
「ああ、君が任された奴らか…全員死んでたよ」
「ジンは?」
「…化け物めとご機嫌に呟いていたな」
「はっ、ざまぁ」
化け物は聞き捨てならないが、これで賭けは私の勝ちである。
ふと、首元にある筈のネックレスが無いことに気づく。
何度指で探しても、見下ろしても、付けていたネックレスがない。
待て待て待て、あれないとメンタル絹ごし豆腐が豆乳になっちゃう。
それだけはまずい。
「何か探し物か?」
「ネックレス、青いのついた、私がしてたやつ、どこ?」
思わず縋るように腕を掴んでしまい、急いで手を離す。
まずいまずい、すでにメンタルが豆乳になりかけてる。
「君がしていたやつか。処置の邪魔になるからと一旦外されただけだ。捨てられてはいない、安心しろ」
まぁ血塗れでもう使えそうにはないが。
と手渡されたネックレス。
綺麗なブルーはなんとも汚い塗装がされていた。
血で赤黒くなってるとか呪われそうなネックレスですね。
「…きれいになるかなぁ」
「何か思い入れのあるものだったのか?」
無意識の呟きが聞こえていたらしく、側にある椅子に座ったライは完全に聞く体制である。
え、まじで?
なんとなくこの話をするのは照れ臭いような、くすぐったい気分になるから友人以外にはした事はない。
…でもまぁ水飲ましてくれたしなぁ。
「学生時代、テストで一位とったらご褒美くれるって言われて貰ったやつ」
「親にか?」
「いや、先輩に。多分あれがキッカケで今まで手を抜いていたのバレたんだろうなぁ」
警察学校入って本気で頑張ったら、やっぱお前手を抜いていたなって説教くらったからな。
あの人の前では手を抜くなんて真似は二度とできないだろう。
「すれ違い様に会話をする程度の人だったけど、案外私も懐いてたみたいで…それにアクセサリー自体初めてだったから、それからずっと愛用してたよ」
「初めてということは中学校時代か?」
「いや、まさかの高校。やっぱ高校生って多少なりとも持ってるのが普通だよねぇ」
「一番気にする年頃だからな」
「私洒落っ気ないし、そういうのに興味なかったからなぁ…でも嬉しかったのは確かだよ」
首輪みたいだと思いもしたが、嬉しかったのもまた事実。
そうでなければ数年たった今もつけてるわけがない。
「成る程、それが君の初恋か?」
「初恋なんてキラキラしたものじゃないよ。だって中身開けた瞬間首輪だと思ったし」
「首輪?」
「私その人の忠犬って噂されてたから」
「それはまた、穏やかじゃないな」
「いやほんと、私の人権あれからずっと家出してんだけど知らない?」
「なら見つけたら帰るよう伝えておこう」
「頼んだよライ」
「ああ、任せてくれ」
何度か一緒に任務に行ったことがあるけど、ライって割と冗談言うんだな。
笑った顔はやはりイケメンだった。
腐れ友人が見せた赤井という男の姿はどう見ても髪の短いライだけど、本当に彼はFBIなんだろうか。
「そんなに見つめられると穴があきそうだな。どうした?」
「いや、あまりのイケメンっぷりに見惚れたもんで」
「それは光栄だな。お礼に回復した暁には一杯奢ろう」
「マジで?ラッキー!じゃあ頑張って治すわ」
「そうしてくれ。どうやら君を心配している奴が他にも居るようだからな」
成る程了解した。
浮かんだ二つの顔が説教してこないかとを祈ろう。
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