Act.1

くぁぁ、と大きなあくびを一つ。
どうも昼休み後のこの時間は眠くなって仕方がない。

Act.1

5時間目の数学、そして最大の難問である6時間の世界史を抜けて、LHRの時間となっている。
何やら次の行事の文化祭について話しているようだが、お構いなし。
私は眠いんだ。

「じゃぁ、今年はこのクラスは踊りでいいなー?」
『イェェェエイ!!!』

周りから声が上がる。
煩くて寝れやしない。
私は眉間に皺を寄せ、黒板を見つめた。
そして目を見開く。
“ダンス・・・空条承太郎 花京院典明 城鈴蘭・・・・・・”
私の後ろと前にいるガタイのいい男と共に名前が書かれていた。
誰だ、書いたやつ。

「空条と花京院と城鈴はギャップ萌ってやつだな!」
「今言った奴、消えればいいのに。」

あ、つい心の声が出た。
周りの視線が突き刺さる。
前と後ろにいるはずの二人がいないせいもあり、直撃しているのは言うまでもない。

「デレれば城鈴は可愛いのに・・・」

ニヤニヤしながら話す進行係を睨みつけ、また机に顔を近づけた。
それと同時に黒板側のドアが開く。
そりゃーもう、叩きつけるかのように。
その音から私は空条と花京院が入ってきたことを確信する。
足音が近づいてきて、前の席の花京院が椅子を私の机にぶつけてきて、空条は机を私の椅子にぶつけてくる。
ナニコレ?ただの嫌がらせ?
周りから『うわぁ・・・』とか『ジョジョー!!』とかいう声が聞こえてくる。
前者はともかく、後者の黄色い声はうざいとしか言い様がない。
私はゆっくりと体を起こし、目の前にあるピンク頭からぶらりと垂れ下がっているひと房を掴んだ。
自然と花京院はこちらを向く。

「オイ、テメェ、何やってんだよ、コラ。」
「何って・・・椅子をぶつけただけだよ、蘭。」

びきり、と音がした。
それは私の後ろからで、ちらりと見てみると空条がシャープペンシルを握りしめていた。
そのまた後ろに青い人みたいなのが見えたのが気のせいだろう。
前を見ると花京院が笑っていた。
そりゃーもう、にっこりって感じに。
隣に緑色がいたのは気のせいだ。

「空条、何してんだよ。勿体無い。」

あーあ、と呟くように言いつつ花京院から手を離して空条の手の中の物を奪う。
そして言葉を失う・・・わけないだろ。

「なんで私のなんだよ。」
「城鈴、これ貸せ。」
「借してやっても良かったが、壊した時点でアウト。」

空条は無駄に背が高いから見下したように私を見る。
私も負けじと睨んだ。

「承太郎。」

バチバチと火花が散っていそうな二人の間にピンク髪の言葉が割り込んできた。

「司会の人、困ってるよ。」

振り返ると、やっぱり笑ってる。
花京院の隣にいた緑の物体はなぜか光を放っていた。
これはあれか?私を殺そうとしてるのか?
私は薄目で緑の物体を見つめる。
しゅるしゅると緑の物体の体縄のようになって私の左腕に巻き付いてきた。
ナニコレキメェ。
とりあえず気にしないわけにもいかないが、仕方なく無視を決め込むことにして、空条を睨む作業にまた励むことにした。

「・・・・・・蘭は見えてないの?」

背中の方から声がする。

「何が?」
「左腕にあるキモイの。」
「・・・自分で言うか?お前のだろ?」
「んー・・・まぁね。」

空条を睨むのをやめ、花京院のほうを向く。
花京院が何か話したそうだったから小声でぼそぼそと会話をしてみた。
暫く聞くだけ聞いてみると花京院の隣にいるのは“スタンド”と言うらしい。
じゃぁ、空条のもそうなのか。
花京院は“スタンドが見えるのはスタンド使いだけなんだよ”と言ってきた。
・・・私の周りには何もいないんだが。

【知識が増えた】

(こんなこと知っていて何になるんどろう)
(いつかきっと必要になればいいねー)
(他人事か)

(2017/10/03) 歌暖

乱雑カルテット