コーヒーカップで乾杯

銀さんにピアスを見つけてもらってから一週間、ご飯を作って欲しいと言われてから一週間、一週間も経ってしまった。いまだに何を作ろうかうんうんと頭を抱えながら日々を過ごしていたらあっという間に時間が過ぎてしまい、さすがに不躾ではないかと焦り始めている。今更だけど。
銀さんと私とでは生活リズムが合わないのか、不思議とこの一週間顔を合わせていないせいで余計気まずい。
「どうしよう陸奥…」
「わしに相談しなさんな」
静かにマグカップに口をつけ端正な顔で書類をパラパラとめくっていく陸奥を見つめる。陸奥とは高校生の時からの付き合いで、同じ大学に通い、お互い社会人になってからも最低月に一回は顔を合わせる友達、いや、私にとっては一番の親友だ。
ここ一週間のことをうじうじと説明したらばっさりと切られた。でも陸奥くらいさっぱりしている方が、色々とあれこれ考えてしまう私にはちょうど良い。
「そがに悩まないでも、名前は料理が上手なんやきさっと作って渡して終わらせればいいぜよ」
「陸奥に言われると嬉しいな…うーん、でも、男の人って何が好きか分からないし」
「何でも食いそうやがな、無難に一番得意な料理でもご馳走しちゃればええ思う」
一番得意な料理か…。今まで作った中で一番美味しくできたと思った料理といえば、何だろう。陸奥は私の作ったものを何でも美味しく食べてくれるから気にしたことなかったな。
「陸奥は私が作った料理全部美味しいって言ってくれるよね」
「本当のことやき」
「ふふ、何が一番美味しかった?」
「全部」
「えー!」
「本当やき、たまには自分で決めてみんさい」
陸奥は優しいなあ。もうすっかり氷が溶けてしまって薄くなった抹茶ラテを飲む。銀さん本当になにが好きなんだろう。でも、陸奥と喋ったおかげで少し自信がついたかも。明日にでも作って、隣の部屋を訪ねてみよう。
書類のチェックが終わったらしく、書類をまとめてファイルにしまい、私が作ってきたクッキーを口に入れて少し顔を綻ばせる陸奥がかわいくて写真を撮ってしまいそうだった。怒られるからやめたけど。