ゲーセンを出るまでが大変だった。
というのも、とりあえず映画館に行こうとゲーセンを出ようとしたタイミングで元彼が来てしまい、早速彼が私のボディーガードをしてくれるハメになってしまった。
おかげで店の入り口で「浮気だ」と叫び散らすわで、ぶん殴りそうになる自分を止めるのと、すでに拳を上げかけていた彼を止めて車に乗り込んだ。
「あの……ごめんなさい」
「――いや、別に、大丈夫。むしろ頼まれた通りだし」
「余計にごめんなさい……」
明らかに機嫌が悪い彼の運転は、それでもさほど荒くはなかった。女の子を助手席に乗せてる感覚が一応でもあるのだろうか。
さすがに公衆の面前であんなに叫び散らされるとは思っていなかったので、申し訳なさが拭えない。
助手席でぼんやりしていると、いつの間に多少機嫌を直した彼が、恐る恐る私の手に触れた。
「な、……に、ですか」
「ん、いや別に。触りたかった、だけ」
言いながら指先を絡めてくる。終いには手をしっかり握る形になって、意図が掴めない。
「元気出させようとしてるだけですか? それとも、――」
「それとも。」
恥ずかしがった顔を背けて、言葉の続きを遮る。肯定とも遮断とも取れる一言。
とりあえず今が面白いからいいやと笑って手を握り返すと、少しだけハンドル操作がブレて、私は笑う。
赤い顔の彼の目が泳いでいた。
「彼氏、気取らせて。こういう時くらい」
その目はこちらを向かない。でも運転中の視線が泳ぐ場所は限られている。
運転の支障にならない程度の場所に身を乗り出して、笑う。
「もしかして、だからさっきから敬語、ないの?」
気付いてはいた。意図が掴めなかった。本人がその意図を自白した。
正解を言い当てられて、私の取り繕った敬語すらも外した言葉を聞いて、二つの要素で崩れ落ちかける。
「きょーくん、前見て」
私も初めて彼の名前を呼んで、ああ、意外と恥ずかしいなと苦笑いをする。
タイミング良く映画館の駐車場に着いた車の中で、彼は私の手を握ったまま、耳まで真っ赤な顔を隠すように突っ伏した。
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