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いつも通りにベッドに入り、推しのインスタライブみながら寝落ちて、ふとアッツ! 寝苦し! エアコン!! と飛び起きたら、海のど真ん中を揺蕩っていました。いやどういうこと?
「どこ……ていうか、えっ? なに……?」
ぷかぷか浮かぶベッドの真ん中に座り込み、辺りを見回す。海、海、海――海以外、なんもない。島とか船とか岩陰とか、そんなものはなにひとつとしてなかった。あっても困るけど。どうしろってんだってなるけど。
え、これなに、え……ゆめ……夢かな。あ、夢か。
導き出された答えにすぐさま納得して、枕元に置きっぱにしていた携帯をなんとなくつける。充電は三十パーもないし、電波は圏外だった。夢だからそりゃあそうか。仕方ないよね。
そう結論づけて、私は再び横になった。背中からゆらゆらとなんだかやけにリアルな振動がして、胸がヒヤリとした。
「……夢の中なのに、あっつ」
真上から照りつける、漫画かよってくらいデッカイ太陽へ手を翳す。現実世界が暑いんだろうな。ていうかこの匂いなんだろ……。この生臭いというか潮の匂いというか……隣の部屋の人が魚でも焼いてるのかな。窓開けて寝てたっけなァ……?
なんてうとうとしかけていたが、突然ベッドが大きく揺れたことで急激に意識が覚醒した。横に、つまり海に転がりかけたので、慌ててベッドボードにしがみつき――目の前に並んでいた、さっきまではなかったはずの指にポカンとする。人間の手。なんで。どこから。浮かび上がった疑問のままに顔を上げれば、蒼く光る海を割るように、肌色がながーく走っている。
「は?」
健康的な肌色は、なんだかどっかで見たことがあるような麦わらマークを靡かせる船から伸びていた。正確には、ドクロにそぐわない愛らしいヒツジの頭部から。
その赤い服の男と、目が合う。
船と私は、かなりの距離があった。
それなのに、私は腕の主とたしかに視線を交錯させたと思った。目は別に良くない。だからこんな距離から“彼”の瞳なんて、見えるはずもないのに。落ちてきた確信にはっきりとした理由をつけられず、しかしそれなのに絶対にそう、と感じていることが、自分でも不思議だった。
ベッドを掴んでいる赤い服の麦わら男が、不意にニッと口角を上げたのが、また不思議と見えた気がした。とてつもなく嫌な予感が襲ってきたので、私は咄嗟にベッドボードへしがみつく力を強くする。それと同時に、目の前の指にもグッと力が篭った。
「あああああああ?!?!!」
ベッドが船へ向かって一直線に、海上を滑るように飛んでいく。船首であるヒツジにぶつかる、という寸前で、麦わら帽子の男はさっきに較べればだいぶ短くなった腕をブンと振り上げ、ベッドを空へ持ち上げた。宙を飛ぶベッドに合わせて体が浮き上がり、胃が跳ねるようないやな浮遊感が全身を包む。
「(あ、これ無理)」
手汗で滑り、ベッドボードから手が離れた。死を覚悟して目をギュッと閉ざした刹那、投げ出された胴体へなにかが巻き付いてきて、ビュンと風で髪がまきあげられた。
背後で落下したベッドが壊れる音がする。密着した熱い温度にそうっと瞼を上げれば、鼻が触れそうな距離に爛々と目を輝かせた男がいて、ぎょっと息を詰めた。額に落ちてきた麦わら帽子のつばの影に、少しだけ涼しいな、なんて現実逃避をする。
「〜〜〜〜?!」
いや、なんて??
騒ぎを聞きつけた面々が甲板にでてくるまで、私は目の前の男が捲し立てる意味の分からない音の羅列を、唖然と聞くほかなかった。
ていうかあの、これ、もしかして夢じゃない感じなのかな。
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