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「そうか、麦わらの一味がお主を……」
しらほしが可愛がっている鮫のメガロから報告を受けたネプチューン国王は、麦わらの一味を王宮へ招待すると決めた。国王の命令に、王宮が途端に慌ただしくなる。
「会いたいかい?」
フカボシの問いかけに、傍らに控えていた女は表情を変えずに口を動かした。
「――いいえ、別に」
女の顔には、さざ波ひとつの動揺も浮かんでいない。告げる声もいつも通り、無感情で涼やかなものだった。
「特に興味ないです」
女はフカボシから目を逸らさずに、平然と言ってのける。フカボシは「だが」と食い下がった。
「彼らはもしかすると、きみを探しに来たのでは?」
「まさか! だって彼らは私がここにいることすら知るはずがない……そうでしょう?」
「当然じゃもん。お主に関しては兵士たちに厳重な緘口令を敷いておる」
「その節は感謝の念に耐えません。心より御礼申し上げます、ネプチューン国王様」
得意げなネプチューンへ、女は慣れた様子で恭しく頭を下げた。
「そもそも、“麦わらの一味が仲間のひとりを捜してる”だなんて噂、この二年で一度もたっていませんし」
「それはそうだが……」
彼らほどの賞金首が揃った海賊がすることなら、どんな些細なことでも新聞が大袈裟に取り上げるに決まっている。現に先日麦わらの一味が二年ぶりに島で大暴れしたことは、新聞が一面に取り上げていた。
陸からの情報筋によると、ここ最近シャボンディ諸島では偽の麦わらの一味が随分と好き勝手していたらしい。彼らへ灸を据える目的もあって、麦わらの一味は本格的に堂々と動き出したのだろう。それまでの二年は海賊らしく海軍や海賊狩りから逃げてコソコソと海を回っていたに違いない。きっと慎ましやかながらも楽しい旅をしていたのだろう――私のことなんて忘れて。彼らにとって自分は雑兵、下っ端……まあ、その程度の存在だったのだろう。
女は自身の認識で傷ついたりはしなかった。むしろ的確で正確だろうという自信があった。だから整然と自身の考えを説明した。それでもあまり納得したふうではないフカボシへ、軽く肩を竦める。
「――なんにせよ、彼らにとっても、私はなんでもない存在だったんですよ」
私は彼らの仲間じゃない。仲間じゃなかった。
女はやっぱり至極どうでもよさそうに、そう締め括る。そんな女へフカボシはなにかを迷うような沈黙を挟んで、結局グッと口を噤んだ。
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