いい子いい子、私の子らよ


《御真祖様》

 いい子にしてなきゃサンタさん来ませんよ! 
 咄嗟に口をついてでた言葉は、深く考えて言ったものではなかった。とにかくご真相様の無茶苦茶を止めたくて。「レッツスペーストラベル」とか言って無限の彼方へさあ行くぞしようとする彼のマントを引っ張りながら、『ああ、そういえば今日はクリスマスとかで人間たちやけに盛り上がってるよなくっそズルいお世話係に任命されてからもう何世紀も、私にはそんなゆっくりした休憩なんてないのになにがサンタだ馬鹿野郎!』とむしゃくしゃしたヤケクソからで。
 それなのに、ピタリと動きを止めた台風もといご真相様に、逆に狼狽してしまう。
「サンタさん?」
「そ、そうです」
「サンタクロース」
「いえす……」
 念入りに確認してくるご真相様に怯えながら頷く。
「分かった」
 分かったの⁈ ど、どうしよう、サンタ信じてるんだこの真祖……!
 てくてくと自室へ戻っていく大きな背中を見ながら唖然とする。とりあえず、ドラウスに連絡して相応しいプレゼントを用意してもらわなきゃ……。
 そんなわけで、私は、若干慌ただしかったけれど、ご真相様に振り回されるよりかは断然穏やかな聖夜を迎えることができた。ありがとう人間の文化。来年もこの手でいこう。そんな気持ちで眠りにつく。
 翌夜、起きると棺桶のすぐ外にでかいプレゼントが置いてあった。しかも中身はずっと前から欲しかったもので。目を白黒させていれば、ワクワク顔のご真相様に、「サンタさん、来た?」なんて聞かれ、急変した態度の理由を察する。
 ああもう、これだから、私たちはこの方を嫌いになれないのだ。「来ましたよ」抱えたプレゼントを見せて笑うと、とっても大きなちょび髭のサンタ様は、「よかったね」と少し瞳を細めた。


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