「す、かみこ……」
「素紙子……その諦めの早さはもはや言う気ないだろ」
「す……ぎ……花粉……」
「この辺針葉樹多いもんな……」
「主基田……」
「お、惜しい」
す、す、す――。
「すき、です」
ロナルドくんが、元から開いていた口をさらにあんぐりと開いた。その手からブラウニーが落ち、皿の上にぼとりと着地する。この世界にやってきて、二週間が経った夜のことだった。
「す、すき、すきです、すき」
「お、おう!」
狼狽しているロナルドくんから目を離さず、勢いに任せて続けざまに捲し立てる。口を閉じてしまったら、もう二度と言えなくなってしまうような気がしていた。
「すき、好きです、本当に好き、ずっと前から」
「え、すげえ、めっちゃ言えて――」
「――ロナルドさん、あなたが好きです」
はあ、と息を吐き、やっと口を動かすのをやめる。言えた、ついに――やっと言えた! 照れよりも達成感がすごかった。というかロナルドくんに照れとかは今更ない。我ながら変だとは思う。まったく同じ顔なのに。
「ありがとう、これでロナルドさんに告白できる……ロナルドくんのおかげだよ」
「あ……ああ、よかった、うん、ほんと……よかったな! あ、じゃあお祝いに酒でも開けようぜ。俺、とってくる。いいやつあるんだ」
「え、そんな悪い……って行っちゃった……」
返事も聞かず、ロナルドくんは大股でさっさと部屋を出て行ってしまう。一週間ずっと相手をしてくれた上にお祝いまでしてくれるなんて、本当に彼は優しい。大皿からブラウニーを一切れ摘まむ。せっかくなら赤ワインがいいな、なんて現金なことを考えながら。
しかし、気のせいだろうか。こちらを一度も見ずに寄越された祝福の声は、言葉ほど嬉しそうな音をしていなかったような気がした。