「イタリア怖い……日本帰りたい……イタリア怖い……日本帰りたい…」

いつもの独り言で枕を濡らす。
習慣のように毎日寝る前に、呪詛のようにぶつぶつ繰り返すのは、どこかでこの世界に飛ばした神様的な何かへの言葉でもある。

私は二次元として推しキャラにきゃーきゃー言って騒ぐだけで満足な女なのである。
危険と隣り合わせの実物を拝顔したいだなんて思っちゃいない。

だからモブがいとも容易く死ぬような世界にいくのは死んでも御免だった……のに現実はそうもいかないらしい。

此処はイタリアのネアポリス。
もうこの都市名だけで死亡フラグの匂いがプンプンするぜ!

………何故もっと平和な世界じゃなかったのだろう。
どうせトリップするならスポーツ系の少年漫画世界でもいいじゃないか。

私はミーハー心より生命の方が大事だ。
生命の危険がない世界、プライスレス。

これで私にチートなスタンド能力でも発現していれば、「まだ慌てるような時間じゃない」と冷静さが残っていただろう。
だが、私にそんな能力はない。

せめてもの救いはイタリア語のみならず、おそらく全世界の言語能力がついたくらいだ。
元の世界の私は日本語しかできない。もしそのままでイタリアなんぞにトリップしていたらすでに詰みだった。
あとのトリップ特典は、この世界での戸籍と今住んでいるネアポリスのアパート、それと幾ばくかの貯金である。
………親切なんだか、そうでないのか分からないトリップである。

おお、神よ!
感謝はしないので早く元の世界に帰して賜れ。


「おうち、帰りたい…」

そうして私はネアポリスでまた朝を迎えるのだ。



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