その光景を見た時、私の世界は真っ暗に染まったように感じた。


久しく見ていなかった貴方の姿と、隣で笑う、綺麗な女性。
本当はわかっていたのに、その光景は私に容赦ない現実と痛みを突きつけてきた。

その後どうやって戻ったのかすらあやふやで、気が付けば部屋で一晩中泣いていた。


「……馬鹿みたい」

まるで悲劇のヒロインのように泣きはらして。
自ら逃げたくせに、自分で諦めたくせに、自分で彼よりも元の世界を選んだのに。


今だけ、今だけだから、と言い訳のように祈りながら傍に居続けて、曖昧な距離を彼に崩されそうになったら逃げ出して。

そのくせ彼に他の女性ができたら嫉妬して悲劇のヒロイン気取りになる。

最低だ。でも、最低な私にはお似合いの結末だろう。

愛おしいというこの気持ちだってあの世界に帰れたら薄れて
元の日常に埋もれていって、きっと私は忘れてしまう。

だから貴方も 
―― 私を忘れてしまうことだって理解していたのに。


繰り返されるのは見知らぬ女性と仲睦まじく笑う貴方の姿と
最後に私に紡いでくれた愛の言葉。

その言葉が何度も私の中で再生される度にかすれていってしまう。
もう巻き戻しはきかないのだ。


 本当は、本当は、私も貴方が ―――


云えなかった言葉ばかりが私の中で紡ぎ出されては消えていく。

そうして全て消えてしまえばいいのだ。

この想いも、痛みも、あの光景も、貴方の愛おしい声でさえ、
そして何より醜い私自身も ―――




誤魔化された恋の残骸



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