GUNDAM

素直に褒めてよっ!


「飯」

夜の12時を回るか回らないかの時間帯に帰ってきたギリは、ただいまもなく荷物を乱暴において言った。


「また私?ギリのほうが料理上手いんだからギリがやればいいじゃない」


「俺は仕事で毎日やってるんだ。家に帰ってきてまでやりたくねえよ」



ネクタイをとりながらさも面倒くさそうにギリは言う。

まあ、彼の意見はごもっともだ。18歳で、しかもたったの2、3年でコックになってから彼は毎日料理を客に振る舞っている。確かに家に帰ってからも仕事をしたいなんて人はそうそういない。


「……今日は肉とキャベツを重ねて蒸し焼きにした奴でいい?」

「は、あれレンジにかけるだけじゃねえか」

「うるさいな、あんかけは自分で作るし」


仕事をして家計を支えているのはギリだし、なんだかんだでいつも疲れて帰ってくるから別に作るのはかまわない。かまわないんだけど。


………こいつは料理にうるさい。


そりゃあ、コックの彼に比べれば気合でなんとか料理を作っている私は全然かなわない。し、彼にしては料理に関して言いたい事が山ほどあるのだろう。そのせいか彼は、料理を作るたんびに私に小言を言ってくる。

それが毎日毎日続くと「じゃあ自分で作れよ!」ってなるわけだ。


「はい、できたよ」


こと、とできた料理をテーブルの真ん中に出す。私達は向かい合うように座っていただきますと手を合わせた。

ナイフを器用に使ってケーキみたいに蒸し焼きを切り離す。ギリはキャベツと牛肉を一口食べた。


「……薄い。味にインパクトがない」

「う、でも、前よりかは上手くなったでしょ……」

「それでもまだ俺には届かないな」


にやりといたずらっぽくギリが笑った。


「しょうがあるだろ、あれ持って来い」

「はいはい、わかりました」

くやしまぎれに台所にあったしょうがのチューブをギリめがけて投げてやる。が、彼はなんなくそれを受け止めた。ちくしょう顔に当たってしまえばよかったのに。


彼は切り分けた料理のあんにしょうがを入れた。私もそれにならってしょうがを少し、足してみる。


「こうすると味に深みが出てうまいだろ?」


本当だ。たしかにさっきよりおいしくなっている。

でもなんか自分の味を否定された感じであまりうれしくなかった。


「……たまにはほめてくれてもいいのに」

「なんか言ったか?」

「なんでもないですっ!」

蒸し焼きを切りがつがつと料理を口の中に運んでいく。これでも毎日ギリの小言をちゃんと聞いて上手くなったつもりだ、今日のだってなんだかんだでおいしいし。


「……まあ、お前にしては成長した方だよな」

「ふえ?」

「上手くなったって言ってんだよ」

「ギリ、声が小さい」

「……もういい」

はあ、とひとつため息をつき料理を食べ始める。

いや、ため息つかれてるけどホントに蚊が鳴くような声だったからね?いつもじゃあ考えられないくらい声小さかったけどね?

まあ、もういいっていうんならいっか。ということで私はまた料理に集中した。私はご飯を食べてるときはあまり喋らない方だ。


しばらくお互い黙って食べ続けた。食事のときだいたい話しかけてくるのはギリだから。私はギリの問いかけに答えるだけ。

が、突然ギリが茶碗をばんと思いっきりテーブルにたたきつけた。


「あ……のなあ!もういいってのはもっと構えってことなんだよ!」

「はあ!!?」

「気づけよ馬鹿!」


え、なに?逆ギレ?

ホントに突然なんなんだよ!

「え……と、かまえって……」

私はびっくりしすぎてそれくらいしか言えなかった。

そしてようやく自分が言った事に気がついたのか、ギリは顔を真っ赤にして座り込んだ。


「い、いや、その……」

「もっと問い詰めて欲しかったの?」

「いや、そういうわけじゃあ……」

「だってかまえってそういう意味なんでしょ?」

「だからそうじゃないって言ってるだろうが!」


あ、これ駄目だもう。

完全に逆ギレだ。絶対なに言っても聞いてくれないパターンだ。


「じゃあもういいよ、口利かないし」

「は!勝手にしろよ」

「はいはい勝手にするし私もう寝るから。じゃあね」


こういうときはなにもしない方が一番だ。私はすでに空になった蒸し焼きの皿と自分の皿を重ね、そのまま台所へと持っていった。


「…………」




















「え゛」


その後、髪の毛乾かしたりなんやかんやして寝室に入ると、なぜかギリがいた。


「なんでここにいるの。ギリの部屋あっちでしょ」

「今日はここで寝る。別に俺の勝手だろ」

「いやいやここ私の部屋だし私の寝室」


が、いくら私が言っても彼は一向に出て行こうとしない。今までの経験上こうなったら彼は絶対自分の意見を変えない。仕方がない。私はひとつため息をついて今日は彼と一緒に寝ることに決めた。


「お風呂はどうしたの?明日も仕事でしょ」

「入った」

「早っ」


くだらない会話をしながらお互い私のベッドにもぐりこむ。彼の少し長い髪はいつもみたいに耳の下で結ばれてはいない。

改めてみると、ギリって顔整ってるなあ。


「ね、さっきなんて言おうとしたの?」

「はあ?」

「ほら、もういいよって言う前」

「ああ、あれは前よりは上手くなったなって…………べ、別にそういう意味じゃないからな!まだまだお前なんて俺より下手だからな!」

あわてて言い訳っぽく反論するギリを見て、私は思わず笑ってしまった。


「ギリってホントツンデレだよね」

「はあ!?」


くすくす笑いながら私はギリに背を向けた。とたんにギリは照れ隠しのように私を抱きしめる。私達が一緒に寝るときにするいつもの寝方。


「ギリのそういうところ、私好きだよ」

「……んだよそういうところって……」


あきれ口調で言葉が返ってくるけど、そういうところはそういうところなのだ。


明日はいつもより料理がんばってみようかな、なんて思ったり。それでいつかギリをぎゃふんといわせてやる。

たぶん、絶対私は、ずっとギリに敵わないだろうけど。


こういうところはギリに勝ったりするんだけどね!











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全然夢主の名前呼んでない。

ごめんなさい\(^o^)/

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