GUNDAM
彼と一緒にお店がしたい!
「ひさしぶり、ギリくん!」
「久しぶりっつっても一週間くらいだけどな」
晩御飯の材料を片手に、ギリくんは少し疲れた顔をして私の家に来てくれた。
一週間くらい、なんていうけど私には一週間も、だ。私はギリくんに飛びついてキスをせがんだ。ギリくんは優しいから、ちゃんとそれに答えてくれる。
「ふふふ、一週間ぶりのギリくんのちゅーだ」
ふにゃりと顔をほころばせると、きったねえ顔、とギリくんが苦笑交じりに私の頭を乱暴に撫でる。うん、ちょっと安心。
「今日のご飯はなに?」
「あーそうだな……ハンバーグなんてどうだ?」
「わーいギリくんのハンバーグ!」
「お前は俺の作る奴ならなんでも喜ぶな」
買ってきてくれた食料を選り分けてるギリくんに、「だってギリくんのご飯なんでもおいしいもん」と返すと、「そうか」とそっけなく返されて、どっかへいってしまった。
後ろから見え隠れする耳が真っ赤なのを見て、私はにやにやと笑いが止まらなかった。
******
「ギリくん、大好きー」
「あーはいはい」
「ギリくんの髪って綺麗だよねー。なんでそんなに伸ばしてんの?」
「じろじろ見てないでさっさと食べろよ」
「はーい」って素直に返事するけど、ギリくんはやっぱりかっこいいから、じっと見つめちゃう。フォークを持つ手とか、大きく口を開けて食べるところとか。
なんか、やっぱり愛しいから、ちょっとドキドキしちゃう。
「ギリくんさあ、お店とか出さないの?」
「コックになってから2年くらいだぞ?まだまだ早いし客も掴めねえよ」
「ギリくん顔いいしさあ、お客さんの前で調理するとかどう?日本でも調理免許取ってるイケメンがテレビに出てたりするし」
そこまで言って、ギリくんはちょっと考えたように首を捻った。
「するにしても、もう2、3年修行してからだな」
「私、ギリくんと一緒にお店したいのに……」
「ウエイトレスでもする気か?」
ギリくんはせせら笑った。うるさいな、いいじゃんか。だってウエイトレスって一度はやってみたいじゃん?
似合う似合わないは別として、エプロンとか、カチューシャとか、トレイを持っていくところとか。何より、ギリくんが作った料理を運ぶんだよ?
「それもいいけど、パソコンの学校とか行ってお勉強して、会計とか事務関係のことができればなあって。ホラ、そういうのって、案外お金がかかるんでしょ?」
「お前の割には考えてるんじゃねえか」
「パソコン使えないけどね」
「やっぱお前はお前だわ」
ハンバーグを口にしながらくつくつと彼は笑う。私もハンバーグを口に入れた。やっぱりおいしい。お店出しても全然大丈夫だと思うけどなあ。
「ここにはもう店があるから、出すとしたらもう少し遠いところで出す事になるが、家族なんかはいいのか?」
「うん、いいの。家族も大切だけど、ギリくんが一番大切だから」
「でも、パパなんかはイヤミとか言ってきそうだけど」なんて言ったら、ギリくんはけらけら笑った。そりゃあ愛娘が男と遠いとこに行けばなあ、って。
「わかった、考えといてやるよ」
食事を終えたギリくんは、皿を重ねて席を立った。
「お前が俺を支えてくれるんだろう?楽しみにしとくわ、お前がパソコン使えるようになるの」
「私のウエイトレス姿は?」
「そんな体型で似合うと思ってんのか?」
「ギリくんにいっぱい調教してもらうから平気ですー!」
冗談半分にそう言うと、ギリくんは真っ赤になってしまった。本当に冗談半分だったのに。
「ギリくん顔真っ赤」
「うっさい」
私がけらけら笑うと、ギリくんはこつんと頭にげんこつをした。ぜんぜん痛くないげんこつ。私はなんだか愛しくて、うれしくて、またにへらと笑った。
「ギリくん、大好きだよ」
「知ってる」
ギリくんは、勝ち誇ったように、にやりと笑った。
- 15 -
*前次#
ページ:
ALICE+