GUNDAM
究極のラヴ・ストーリー 後編*
デュオ・マックスウェルは目的地に向かいながら、複雑な感情を抱いていた。
(全く冗談かと思ったぜ、ヒイロがこうも長く同じ場所に居続けるとは……)
彼はヒイロとスイの関係を知っていた。それはガンダムチームなら全員知っている事なのだが、ヒイロが居なくなったと同時に彼女もいなくなったから、二人は同じ場所に居るんだろうと全員が思っていた。
彼はスイが亡くなっていたとは知らなかった。なぜなら彼女が亡くなって間もない頃、その事実を認めなかったヒイロが彼女のデータを書き換えたからだ。
それでもヒイロがスイのために一箇所にとどまっていることは容易に想像はできた。
「おーい、誰かいねえかー」
デュオはヒイロの住む玄関に立った。ノックをしても返事は無い。
(可笑しいな、ヒイロの気配はするのに……)
デュオは不思議に思いながらも、玄関のドアを引いてみた。すると驚いたことに玄関はぱっかりと開いたではないか。
まさかヒイロがこんな無用心なことをするとは。デュオはあっけにとられてしまった。任務が失敗したら自爆までするあのヒイロが?
いや、もしかしたらオレが来るのをわかってわざと開けていたのかも……。
アポなしなのに来るとわかるとは、さすがヒイロだな。
デュオはそう思うことにした。
「おーい、ヒイロー」
玄関をくぐり、彼の名を呼びながら廊下をうろついた。
「ヒイロー、いねえのかー!スイー!」
デュオはスイの名前も呼んだ。なのに一向に誰かが来る気配はない。デュオはため息をついた。
……自分でこっちに来いということか。
そのとき、デュオは異様な匂いが漂うのを感じた。嗅いだことがある、なつかしいコロンの匂いが、強烈なまでに家中に充満していたのだ。
デュオは思わず鼻をつまんだ。コロンをつけるにしては強すぎる。まるで家中コロンに浸したみたいだ。
「おいヒイロ、出て来いよ!んだよこれ!」
鼻をつまんだままさっきより強い口調で叫んだ。それでも返事は返ってこなかった。叫ぶから口で思いっきり息を吸う。それでもデュオはコロンの中身を口で吸っているようで気持ちが悪かった。
ふと、デュオはさらなる違和感を感じた。ほんのわずかだが、腐臭がしたのだ。
昔戦場にいたデュオは、腐臭には敏感だった。強烈なコロンに耐えながら、鼻で腐臭を確認した。
薄い。薄いが、確実にそれはする。
嫌な予感が脳裏を掠めた。デュオは大急ぎでヒイロを探した。強烈なコロンの匂い、腐臭、そして誰も返事をしない……。
匂いに耐えながらも、デュオは懸命に探した。
ことんと、とある部屋から音が聞こえた。
人影がある。そしてコロンの匂いはここが一番強い。デュオは銃を構え扉を開けた。
「おい!誰かいるの………………!!?」
瞬間、デュオは言葉を失った。
そこには死体がひとつと、それを幸せそうに抱いているヒイロがいたのだ。
「ヒイロ……!?」
「………デュオか」
ヒイロはちらりとデュオの方を見た。そしてさも興味がなさそうにまた視線を死体の方へ戻した。
「お前…なにやってんだよ…それ……」
「スイだ」
デュオは衝撃を受けた。スイ?あの死体が?
「目がおかしくなったのか、どこからどう見てもスイそのものだろう」
「どこからどう見てもって………」
デュオは改めてその死体を見た。
明らかにそれは不自然な形をしていた。おそらく、死んでからすでに1年はたっているだろう。髪の毛はやや薄いもののまだ生えていて、顔や胴体はまだ隣のヒイロくらい太っているが、手足は棒切れのように干からびていた。
それに、顔は人の肌とは違い、人工である事がわかった。それでもかろうじて、それがスイの面影がることがわかった。
「死んじまったのか、スイ……」
「ああ、一年前に肺の病気で」
肺の病気で。
まさか、全然知らなかった。
いや、そんなことはもうどうでも良かった。知り合いが亡くなった事実より、こっちのほうが衝撃的だったのだ。
「………ヒイロ、やめよう。彼女をすぐ墓に戻すんだ」
「なぜだ。これはスイが望んだことだ。」
「だからといって!それは許されることじゃねえぞ!」
「スイが俺の夢に出てきて、棺から出して欲しいと言ったのだ。どうしてもというならお前を殺す」
ヒイロは、拳銃をデュオに向けた。
(………くるってやがる……)
デュオは、唐突に吐き気がした。
その後、自分だけでは処理しきれないと判断したデュオは、仲間に連絡を取った。
忙しいカトルや協調性のない五飛が応じるとは思っていなかったが、あのヒイロの異常事態と言って全員がそろってくれた。とはいえいる場所も地球にコロニーにと全然違うのでパソコンの中で、だが。
まだヒイロと実際にあってはいないものの、デュオの証言により三人とも目を丸くした。スイの死と、ヒイロの現状に。
ヒイロとその死体をどうするか、という議論は、思いのほか意見が割れた。
デュオは死体を埋めることを主張した。が、カトルは「彼が幸せならそれでいいのでは」と、デュオと真っ向から対立した。トロワは中立で、五飛もややカトルの意見に偏っていた。
が、一番近くにいた五飛はデュオと一緒にヒイロ家に訪れ、意見を180度変えた。「あんな醜悪なものは見た事がない。即刻あれを排除した方がいい」と。
散々話し合った結果、結局死体はそのままにしておくことにした。カトルの言うとうり、結局はヒイロのことだし、無理矢理消去しようとしたら自分達の命が亡くなる可能性もあったからである。
それからまたしばらくして、デュオは一度だけヒイロのもとに訪れた。
「ヒイロ、やっぱそれを手放す気にはなれねえか」
「何度も言っただろう。俺は彼女を愛している。それか俺が死んでからもそうだ。俺は死んでもスイと離れる気はないし、だれかに放されることもない」
「そうか」
デュオは、もう何を言っても駄目だと判断した。
「………わかった。もう何も言わねえよ。それにもう二度とお前とは会わない。元気でな、ヒイロ」
「デュオ。お前はなぜ俺にこだわる」
デュオは最後に、こう告げた。
「お前は、愛に狂ったんだよ」
………………………。
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ヒイロさん狂愛短編でした。
たぶんわかる人にはわかると思いますがこれは実際に起こった事件を基に作成しています。気になる人は「エレナ 究極のラブストーリー」を検索してみてください。責任は負えませんが。
これを読んでいて真っ先に思い浮かんだのがヒイロだったのでヒイロ夢(?)にしました。なぜ彼が浮かんだのは謎ですが……。
ちなみにこれをこわい話で検索してて見つけたのでその日は眠れませんでした。(笑)やっぱ夜にこわい話見るのは駄目ですね。
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