Tennis of the Living Dead

001


「う……ん……」
「永瀬、おい永瀬!」
 
 ……誰?
 
 誰かが、呼んでる?
 
 ……わたし、私?
 
 わたし……?
 
「お、いし?」 
「よかった。気がついたか」

 ピントの合わないレンズみたいに、視界がぼやけている。曇り空だろうか、紫色の背景に、坊主の男の人らしき輪郭。
 見た目だけではわからなかったけど、声で、その人物が我が青学テニス部の副部長だとわかった。
  
「怪我はないみたいだにゃ」
 
 隣で英二くんの声も聞こえた。
 
 だんだん視界と頭がはっきりしてきた。確か、船が沈没するからって救命ボートに乗ったんだっけ。それで私、ボートから落ちて、ここに流されて来たってことなのかな?
 
 ……あれ、なんでボートから落ちたんだっけ? 体が滑ったとか? あれ?
 
 なんか違う気がする。なんだろう、上手く言えないけど大事なことを忘れているような……。
 
「……」
 
 喉元……変な感じ。触っても怪我とかしてないけど、ぽっかり穴が開いたみたいな感じがする。流されてるうちに強く打ったのだろうか。
 
「桃城くんと海堂くんも無事だったんだね」
「あい先輩! 俺もうダメかと思いましたよ! 先輩が無事でよかった……!!」
 
 桃城くんが両手で私の手をぎゅっと握った。握りすぎてちょっと痛いくらい。海堂くんも安心したようにふしゅうと唸る。
 
「……まって、一緒に乗ってた佐伯さんと黒羽さんは?」
「それが、先輩が流された後、二人もボートから落ちちまって」
 
 ……えっ?
 
「見てないの? 私と一緒で、流されてないの?」

 桃城くんと海堂くんは、うつむいて押し黙った。
  
「そんな……! だって、ふたりとも私を連れ出してくれて……! どうしよう! 私のせいで、ふたりとも海に……!!」
「落ち着いてください! あい先輩のせいじゃないっすよ!」
「早く探さないと! やだ、どうしよう! 私のせいでっ」
「先輩」
 
 ぽんと、誰かが肩に手を置いた。
 
「先輩、落ち着いてください。一回深呼吸してみましょう」
 
 私よりも少し小さい手、リョーマくんだ。
 
 「俺に合わせて、大きく吸ってみて」
 
 リョーマくんに従って、私は大きく息を吸う。「少しずつ息を吐き出して」時間をかけて、吸った息を全部吐き出す。
 
 それを数回繰り返していくうち、少しずつ、落ち着いてきた。
 
「見たところ他の学校の人たちもいないし、先輩がこっちまで流されたんだったら二人もほかのとこに漂流してるかもしれないでしょ?」
 
 ……確かに。
 そういえばここにいるのは青学のメンバーだけで、あれだけ沢山いた他校の人たちは見当たらない。
 
 けっこう広い島みたいだし、もしかしたら、他の人たちと一緒にいるかも。
 そう考えると、ちょっとだけ安心した

「とにかく、今は自分達の安全第一だ」
 
 私が落ち着くのを待っていてくれたのだろうか、手塚が全員に声をかけた。
 
「全員固まって動くぞ。近くに他の学校のメンバーもいるかもしれない、油断せずに行こう」
 





生存確認

永瀬あい
越前リョーマ
手塚国光
大石秀一郎
不二周助
菊丸英二
乾貞治
河村隆
桃城武
海堂薫

[6]

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