ジャンヌ・ダルク
初恋の相手は誰だ?一瞬で終わったものも含めてよいのならその答えはジャンヌ・ダルクだ。
幼少期の「私」はジャンヌ・ダルクに憧れた。一種の一目惚れだろう。絵本でその姿を見た時から心を奪われた。しかし「彼」が「女」だと聞いて打ちひしがれた。なんだ女なのか、と。

貧弱。二十歳になる頃にお前は死んでるよ。それが周りからの評価だった。体が弱いのは昔から。病弱気味であった「私」は「男らしい」に憧れていた。具体的に言葉にするのは難しい。簡単に言うなら「強い」とか「格好良い」とかそういう感じだ。顔つきも女らしく、母の少女趣味で女装をさせられ、生活にうんざりしていた。そんな時にある男から「私には必要ないから」と言われてトレーニング用品を貰った。それが今の上司である森鴎外だ。森鴎外を初めて見た時、格好良いと感じた。見た目がそうだとか、そういうのじゃない。どこか血なまぐさい臭いところがとても素敵だと感じたのだ。

……と。まあ、この幼女趣味さえなければ森鴎外という人物は「私」にとって最高の、理想の上司であった。
暗い部屋に中年男性が一人、幼女が二人、どう見ても怪しい絵面である。

「態態「私」がする必要は無いでしょ」
「そうよそうよ!千歳が行く必要は無いじゃない」
「二人共、そんな事云わないでくれよ。ウチに適任なのは君しかいないんだ」

そして現在。我等がポートマフィアのボス、森鴎外にとある任務をしてほしいと命令を受けた。
ある組織への潜入調査だった。先日、横浜で取引しているところを見かけたポートマフィアの構成員がある人物に殺された。身元を突き止めるのに苦労したものだ。組織の名称までは分からなかったが、殺人犯である人物は分かった。ジン、それが奴のコードネームだ。
そして「私」以外に適任がいないというのは事実だろう。中也や芥川が潜入捜査をできるとはコチラも思っていない。どちらも派手にやらかすタイプだから。
恐らく潜入するのに便利な異能力を持っているから「私」が選ばれたという事だろう。
「仮面の告白」それが俺の異能力だ。
簡潔に言えば変装。ただし未だこの能力を上手く操ることは出来ず、女性にのみしか変装できない。しかし女性だけといっても幼い童女から年老いた老人にまで変装できてしまう、ということを考えればかなり便利な能力である。何しろ、顔だけでなく体格や声まで変化させてしまうのだから。因みに発動方法は顔に手を触れることだ。

「そういうことなんだ。できるね?」
「はぁ、分かってるよ」

童女は髪をかきあげて答えた。しかし、そこにあったのは童女の顔ではなく青年の顔だった。
断らないことを知っているからそう言う。本当、この人は俺のことを理解しているのだろう。

「俺はそういう役回りだからな」

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