あの日の月は綺麗だった
海賊船一隻が沈没し、唯一生き残ったのがネフェルト・リリーだった。たった一人で生き残り、海岸まで帰った彼女をある海兵がこう呼んだ。
「あいつは海の魔女だ。」
そう呼ばれるようになったことを知った時には、もう知らない人はいないほど、異名になった頃だった。
魔女と呼ばれる私は一体何者なのだろうか。海兵であるのにも関わらず、魔女と呼ばれてしまうだなんて。
そんなことは気にしなくていいとおつるさんに言われたが、何となく心に靄が出来てしまったのだ。だが、それ以上に悩ませたのは彼の笑顔だった。今でもはっきりと覚えているその笑顔は、私の記憶からはどうしても出て行ってはくれないようだ。
「リリー、あんた恋してるんだね。」
少し悲しそうにそう言ったおつるさん。ぎゅっと胸が締め付けられてしまったと言う事は、そう言うことなのだろう。
「想うのは自由。だけどね、想いを口に出してはいけないよ。口に出したらもう後戻りはできない。恋というのは、劇薬だからね。」
その言葉は忠告そのものだった。だけど、その忠告が帰って私の心を落ち着かせた。想っていてもいいと言うことが救いのように感じたのだ。
そのうち消えゆくであろうこの感情とうまく付き合っていくしかない。そう心に決めた日から間もなくして、