
足音0
『もしも違う世界に行ったら〜?』
私は森 里紗。
只今友達のまきとあるわけもない夢の話をしています。
「そうそう!私ね、ハイキュー好きって言ったでしょ〜?あの世界でバレーしている姿を見たいんだよね〜」
『へぇ〜。そりゃー壮大な夢だ。』
「あ!馬鹿だな〜って思っているでしょ〜!」
『してないしてない!!』
「あ、そろそろ教室戻らないとね。」
携帯を見ると授業開始まであと10分。
屋上にいた私達はその場を後にする。
扉を開けて階段を下りようとした瞬間。
「えっ……」
横にいるはずのまきが傾いていく。
『まき!!!!』
瞬間に伸ばした手が掴む先はまきの腕。思いっきり引っ張ると同時に傾く自分の身体。
「里紗!!!!!」
スローモーションに映し出される階段がどんどん近づく。そして泣き叫ぶまきの声。
あぁ、死ぬのか。私は。
まだ何もやりたい事も
叶えたい事もまだ何も…
『まだ…死にたく…ない。』
そう呟いた瞬間思いっきり殴られたような感覚がし、そのまま目を閉じた。
*
*
*
なんだかフワフワする。
とても気持ちがいい。軽い身体。
目を開けるとそこは花畑。私が立っているのは川の上。
『ここって…』
遠い記憶を呼び起こす。
これは三途の河と思って間違えないだろう。
私はあの時まきを助けて死んだ。
『本当に死んじゃったのか……』
「いいえ、貴女はまだ本当に死んではいません。」
驚いて振り向くとそこには美しい女性の姿。
「貴女はまだ本当に死んではいません。」
『ど、どういう事ですか……』
「本当は貴女はここにいるべき人じゃないのです。」
『ここにいるべき人じゃない…?』
「はい。本来、ここに来るはずだった人は貴女の友達でした。」
『まきが…』
「はい。貴女の行動で彼女は貴女が生きるはずだった時間を過ごす事となりました。」
『そっか…まきが幸せに生きられるのならそれはそれでいいかも……』
「しかし、こちらとしては色々と困るわけです。」
『は、はぁ…と言うか、貴方は誰ですか?』
そう私がいうとその美しい女性は答えた。
「私は天使を統べる者。貴方方には女神と呼ばれております。」
『め、女神様…』
「貴女は本来生きて幸せを掴むはずの人です。しかしながらこちらへと来てしまいました。
貴女はあちらの世界で死んでしまったからです。」
『でも死んでいないのですよね?それは一体…』
「世界と呼ばれる類はいくつもあります。貴女達が生きている世界を私達はシャルアと呼びます。そして貴女が知らない世界も当然あり、アルリア、エルド、プラリネルなど様々な世界があるのです。」
情報の処理が全然追いつかない。私は死んでいない?なら、ここは一体…
「貴女に選択肢を差し上げます。ここで終わりにするか、それとも始めるか。」
『どういう事ですか……?』
「貴方の生まれ育った世界…シャルアではもう生きていけません。その代わり、他の世界で生きる事。それを選択させてあげます。
ただし、その世界で生きて行くのには条件があります。」
『条件…?』
「はい。貴女は1ヶ月以内に誰かを心から愛し、愛される。それが条件です。もし、これができない場合、貴女は確実に死にます。3度目はありません。」
『またそんな無茶な…』
「どうなさいますか?終わりと始まりをご選択下さい。」
悩む事なんてなかった。
そりゃあ誰だって選ぶだろう。
『私は生きたい。始まりを選択します。』
「貴女のその希望、私が叶えて差し上げましょう。貴女がこれから生きる世界…ネフェルト。さぁ、お生きなさい。この世界は貴女の友達からの最後のプレゼンでもあります。」
『どういうこと…』
消えかける足を見ながらその意味を聞く。
「貴女の友達は貴女が死んでから悲しみました。それはもう見てはいられないくらいに。私は夢で彼女と話しました。ここではもう彼女は生きられない。だけどそれ以外の世界なら生きられるならどこで生きて欲しいかと。すると彼女は、
私の行きたかった世界で里紗に生きて欲しい。
そう言いました。それがネフェルト。貴方が生きる世界。いってらっしゃい。いつかまた会える日まで。」
優しい優しい笑顔で笑うその女性を見て、ありがとう。そう言った私は重い瞼にまけ目を閉じたのだった。