朝は大戦争


『起きろーーー!!!飛雄ーー!!!翔ちゃーーん!!!』

毎日の朝の恒例行事。
長男の飛雄と末っ子の翔陽を起こす。

「母さんおはよ。」
『おはよ。ねぇ、お願いだから飛雄起こしてきてよ。』
「ヤダ。」

憎たらしい口調の次男の蛍。
中学2年で飛雄の一つ下。
冷静に物事を見て、何かと弟を気にかけている心優しい息子です。
生意気ではあるけれど…

『もー!!じゃあ孝史お願い!』
「仕方ないな。」

困った様に笑いながら起こしに行ってくれるのが私の旦那の孝支。
優しくて、イケメンで、もう完璧!
怒ったら少し…いや、怖いけれど、いつも家族を想ってくれてます。

「ママおはよ〜」
『おはよう忠!翔ちゃん起きてた?』
「ううん、起きてくれなかったよ。」
『翔ちゃん…忠と双子で何が違うの…』

三男の忠。翔陽の双子の兄で幼稚園に通っている。
優しくて人に合わせてばかりだが、
真剣になるとなんだって諦めない自慢の子です。

『あ、孝支!』
「やっと起きたよ。」
「おはよー!ママ!!!」
「…おはよ。」
『おはよ、二人とも!ほら、早く食べて!』
「ねぇママ!」
『んー?翔ちゃんどうした?』
「夢でね、パパとバレーしたんだぁ〜!」
『パパとバレーしたの?よかったねぇ〜!!!』

末っ子の翔陽は可愛らしく笑うバレーが大好きすぎる子です。
周りが見えなくなるくらい一つの事に集中してしまうから目が離せません。

「俺のこれ?」
『うん、早く食べないと遅刻するよ!』
「いただきます。」
『どーぞ。』

朝に弱いのが長男の飛雄。
バレー部の部長で、毎日頑張ってます。ただ、顔はいいのにモテない理由が白眼で寝てるからと蛍から聞いたときは泣きたくなったけれど…。

「あ、母さん、今日俺部活休みだ。」

飛雄が思い出したように突然にそう言った。

『あ、そうなの?なら、蛍もだね、二人で忠と翔ちゃんを帰りに迎えに行ってきて。』
「え、僕もなの?」
『え、何?彼女とデート?』
「いや、いないの知ってるデショ。」
『なら行ってきてよ〜!』
「暇なくせに?」
『蛍ちゃん、私のどこを見れば暇に見えますか?貴方のワイシャツにアイロンかけて、ご飯作って、ジャージを洗濯して…どこが暇か言ってみて?』
「ほら、蛍。お母さん怒らせると怖いの知ってるべ?」
「ママ…蛍にいちゃんのこと、許してあげて?」
『なにこの可愛い子…!』
「母さんの子だろ。」
『はぁ、飛雄も蛍も忠や翔ちゃんみたいに可愛い時期があったのにな…』
「ははは!まぁ、こんなに成長してくれたんだし、いいべ!じゃ、仕事行ってくるから!」
『あ、孝支!気をつけて行ってきてね!』
「うん、行ってきます!」

チュッと頬から音がする。
ホッペにキスをするのは結婚してからずっとだ。

「いってらっしゃい!パパ!」
「いってらっしゃい!」
「あ、父さん。俺も行くから途中まで行こうよ。」
『え!?飛雄置いてくの!?』
「…寝てるけど。」
『え!?ちょっと!飛雄!早く起きて!!!翔ちゃんと忠はハミガキしておいで!』
「「はーい!」」

毎朝ドタバタ。
だけど、幸せである事には変わりありません。

『ほら、走れ飛雄!』
「行ってきます。」
「飛雄にいちゃん!気をつけてね!」
「おー!」

飛雄が出て行くとちびっ子と私。

『よーし!お弁当オッケー!連絡帳オッケー!よし、行くよ〜!』
「はーい!!」
「翔陽ー!ぼーし!」

二人の小さな手を繋ぎ、幼稚園へと向かう。

『今日は飛雄と蛍が迎えに行くからね。』
「うん!」
「バレー出来るかな!」
『二人でお願いすればきっとしてくれるよ〜!』

だって、二人とも弟が大好きだから。

『よし、じゃあ行っておいで!』
「いってきまーす!」
「ママ、気をつけて帰ってね?」
『うん、ありがとう!ほら、忠も行っておいで!』
「うん!」

笑顔で走っていく二人を見ると、
今日も平和だと思えるのです。


Noah