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私の息子!(忠編)
「はい!お母さん!」
双子の兄の忠はすごくすごーく優しい子です。
『わぁ…綺麗なお花だね!ありがとう!』
「お母さん、ピンク色好きだからこの花はお母さんの花だなって思ってとってきた!」
『忠…!!』
思わず抱きしめると嬉しそうににこにこと笑うこの子は周りからもいい子だとよく言われます。
でもたまに、もっとはしゃいでもいいのになぁなんて思ったり…
「お母さん?」
『なんでもないよ!さて、今日の夜ご飯は何にしようかな〜』
「カレー?卵かけご飯?」
『それ、飛雄と翔陽の好きな食べ物じゃない。忠はないの?』
「僕はなんでも食べられるから。」
たいていのものは美味しいと言ってくれる忠。恥ずかしいことにまだあの子の1番好きなものを見つけられていません。
翔陽と遊ぶ姿を見ながら
『何が1番好きなのかしら…』
そう呟いていました。
*
*
「来週の土曜、部活ないよな?」
「うん、体育館の点検日だからね。」
『急にどうしたの?孝支。』
双子達が眠りについた後、孝支、飛雄、蛍そして私はリビングにいた。
「遊園地に連れて言ってやろうと思って!どう!?」
『確かに…翔ちゃんずっと行きたいって言ってたわね。』
「まあ、いいけど。」
「蛍、嫌そうだな。」
『蛍は賑やかよりは静かなところの方が好きだからね。』
「まあ…でもあの忠も行きたいって言ってたし。行けばいいんじゃない?」
『「ほんと!?」』
思わず声をあげた私と孝支。
「な、なんで急に声出すんだよ…」
驚いたように言った飛雄。
『今まで忠、自分のしたい事とか周りを優先して言わなかったのよ。』
「これは行くしかないべ!」
そう言った孝支に反対する人はいるはずがないのです。だって、いやだと思っていたとしても、みんな、家族のことが大好きだから。
そして、当日の朝。
案の定、楽しみすぎて寝られなかった翔ちゃんと忠。だけど、その心配をよそにいつにないくらい元気な姿で起きてきた。
「「おはよう!」」
『おはよう〜!』
ニコニコしている翔ちゃんと忠にお兄ちゃん達を起こしてくるよう伝えると、ウキウキしながら走っていった。
眠そうに起きてくる二人に抱きつく忠と翔陽はいつも以上に元気いっぱいで、見ているこっちまで元気が出てくるようだった。
「さ、行くべ。」
忠と翔陽を妊娠したと分かった頃に、奮発して買ったファミリーカーに乗り込む。
孝支がエンジンを掛ければ、子どもたちはまるで乗り物に乗ったかのように楽しそうにしていた。
「人多すぎでしょ…」
『そりゃ遊園地だからね。蛍、もうダウンしたの?』
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ、父さん。」
少しダルそうな蛍とは真逆に、楽しそうにはしゃぐ末っ子二人。
「ねえ!あれ乗ろうよ!」
子ども向けのジェットコースターを指差してはしゃぐ二人を見ながら、あぁ、来てよかったなと思う。
『お兄ちゃんたちと行っておいで。』
「母さん来ねえの?」
「俺も。運転疲れたから少し休むから四人で行ってこい!」
ずるいと言いたげな蛍と、分かったと言ってジェットコースターへと向かう飛雄。
『お昼の時間には早いけど、場所取りしておかないと混みそうね。』
「そうだな〜。早めに席、とっとくか。」
レストランに入り、席に座る。
『二人できたのを思い出すね。』
「懐かしいな。あの頃は手を繋ぐのも恥ずかしがってたもんな。」
『こ、孝支もでしょ!!』
そんな昔話に花を咲かせていると、飛雄から連絡が入った。
「母さん?今どこ?」
『少し歩いたところにあるハンバーガー屋にいるわ〜。あ、何食べたいかみんなに聞いて。注文しちゃうから。』
案の定、忠は何でもいいって言うものだから、少しだけ溜息をついてしまった。
「ママ〜!!楽しかった!!!」
「僕も!」
走って帰ってくる我が子を見ながら微笑み、よかったねと言うと、もっとその顔に笑顔の花が咲く。
「あ!ごはん!!」
翔陽がそう言い、急いで座り、もう食べてもいいかと聞くような目線を向けてくる。
『いただきますしてからね。』
「いただきまーす!!」
勢いよく食べ始めたのを見て、飛雄、蛍、孝支も食べ始める。
『忠はこれね。チーズバーガー。』
「ありがとう!」
美味しそうに頬張る忠を見て、思わず笑みが溢れた。
「忠、ポテト食べる?」
蛍がポテトを忠の口元へ持っていき、パクッと忠はポテトを食べた。すると、いつもよりも目を見開いてこう言った。
「美味しい!」
嬉しそうな表情を見て、ハッとした。
『忠、ママのも食べていいよ!』
「ほんと?ありがとうママ!!」
一心不乱にポテトを食べながら、さっきの方が美味しかったな〜、これは美味しい!とブツブツ言いながら食べる。
「忠ってフニャフニャのポテトが好きなんだな。」
バーガーを頬張りながら何気なく言った飛雄。
「うん!これが一番美味しい!」
「じゃあ、これもやる。」
フニャフニャのポテトを忠にあげる飛雄。
今日は初めてあの子が大好きだと思える食べ物を見つけることができた。
*
食べ終えた後はアトラクションに並びまくり、閉園時間の頃には末っ子二人は夢の中だった。
「飛雄も蛍も眠たかったら寝ていいからな。」
「大丈夫だよ、父さん。」
車に乗り込み、そう言った二人だったが、車に揺られているうちにスースーと寝息が聞こえ始めた。
『寝たね。』
静かに笑ってそう言うと、孝支も笑っていた。
『明日のおやつはフニャフニャのポテトかな。』
「意図的にフニャフニャに出来るの?」
『練習するわよ。だって…忠の大好きな食べ物だって知れたから!』
そう言う私に、「そうだな。」と笑いながら言った孝支。
明日のおやつに出たポテトを見て忠は何て言うかな。きっとあの子とことだから、ありがとうって真っ先に言うんだろうな。
心優しい、自慢の息子のために、私は何だってしてあげたいって改めて強く思った日でした。