公認ストーカー

「美月ちゃ〜ん!!」

そうニコニコしながらいつだって彼は私の後をついてくる。




















公認ストーカー
私のストーカーは学校一のモテ男。
そしてとてもとても大切な人。


























『何、私今から移動授業なんだけど。』
「一緒に行こ!」
『嫌だって言ってもどうせ行くんでしょ。』
「まあね〜」
『はぁ。』

そんなため息と共に歩き出す。
隣にいるのは及川 徹。同じクラスでバレー部のキャプテンを任されている。そしてモテる。
そんな彼がいつの日からかまとわり付くようになった。ストーカーの如くぴったりと。
そしていつの間にか学校公認だ。


「あ!岩ちゃん!」
「うるせぇ、クソ川。」
『今日もキレッキレな毒舌で。』
「お前も毎日お疲れ。」
「ねえ、間接的にディスられてない!?俺!!」

お陰様で、バレー部の人とも仲良くなり…
知らないお姉さま方、美人な同級生に囲まれたり……(その度にどこからともなく現れて助けてくれるけど。)
色々な事が目紛しくあった気がする。

「あ、科学の教科書忘れたから、見せて〜!」
『徹、いい加減ちゃんと持って来なよ。』
「でもさ、美月ちゃんと一緒に見れるって、これ以上に良いことないよ!?」

そう熱弁する彼にはいはい。と言ってみせる。
だけど嬉しい。そう思う自分がいて…
いつからだろう。好きだなって思うようになったのは。
科学の時間、上機嫌で授業を受ける及川の隣で座る美月。
一体、彼は何を思っているのだろう。
そんな科学も終わり、トイレに行ってくるからちょっと待ってて!と言い、行った及川を見送る。
私が一人になった瞬間出来るのは5、6人の影。
またか……そう思ってても仕方がない。

『…何か?』
「徹くんとあんた、どういう関係なの?付き合ってないんだろ?なら、馴れ馴れしくしてんじゃねーよブス。」
「身の程知れよ、あんたみたいな地味な子が徹くんと一緒にいれるわけないじゃん。どーせ飽きられるに決まってんだよ。」
『それでも…まだ一緒にいれるのなら私は離れるつもりはないよ。』
「は?話聞いてた?ブスは出しゃばるなってーー」
「誰がブスって?」

ビクリと体を震わし背後を見る女子たち。
そこに立っていたのは、怖いくらい清々しい笑顔をした彼だった。

「なんで美月ちゃんを囲んでるわけ?まさか、ブスって美月ちゃんに言ったわけじゃないよね?」
「いや、それはーー!」
「俺が一緒にいたい人は俺が決める。君達が勝手に決める必要なんてないから。……忠告したからね。」

いつもの及川とは正反対。そんな怖さに女子たちは逃げるようにその場を後にした。


「…ごめん。」
『何で徹が謝るの。』
「いつも俺のせいで嫌なこと言われてるから。」
『そんな私をいつも助けてくれるのは徹だよ。』

いつになく元気が無い。そんな姿、見ていたくない。

『何でそんなに落ち込むの。私は大丈夫だから。』
「美月ちゃんが大丈夫でも…俺は大丈夫じゃない。」
『何でよ。』
「俺の好きな子が本当は傷ついているのを知っているから。」

美月は驚いた。
及川に腕を引っ張られ、あっという間に及川の腕の中にいるから。

「ねぇ、そんなに強がらないでよ。俺の前くらい…さ。」

切なげに吐き出された言葉は美月の心に染み渡る。

『…徹。』
「好きだよ。美月が好き。」

女の子には''ちゃん"をつける彼が、初めて美月と呼んだ。まるで、特別なのは私だけだと言わんばかりに。
それだけで嬉しいのにこの言葉の意味を理解したら私はどれだけ喜べばいいのだろうか。


『…私もだよ。徹が好きだよ。きっともう離れられない。』

ギュッと握りしめた彼のシャツ。
きっと顔が真っ赤に染まっている。そんな顔を隠すように下を向いた。

「それならもう…後をついていかなくても堂々と隣を歩けるね。」
『後をって…ストーカーみたい。』

いつだって後ろから支えてくれた。
知らないとでも思ってた?
そんな彼を次は私が


『支えてあげる。徹、あなたが私にしてきたように。』

自分の出来る範囲だけど、少しでも力になれるように……
そしていつまでも笑顔を見られるように。



Noah