メッセージは3通。
会いたいという、ただそれだけの言葉に、なんと返事をすべきなのか、答えは出ないままだった。
「〇〇ちゃん」
「平野くん、」
今はもう、ほとんど使われていない古い校舎裏のベンチ。
こうして、ここで休憩中の平野くんに会うのは、もう何度目になるだろう。
「今日水曜日だから、この時間ならここにいると思って」
「うん、この後朝一で必修です」
「大学生の授業ってよく分かんないけど、なんか大事なやつだよね」
「うん」
「ごめん、昨日も会ったばっかなのに」
「ううん、」
本当は、ここにいれば、なんとなく平野くんに会えそうな気がしたから。という言葉は、黙っておく。
トークアプリの一番上にある履歴は、今日も"おはよう"という言葉から、何度もやり取りをした平野くんとの履歴。
そして、その何行か下に未読状態のまま残る履歴は、昨日、廉くんから届いたメッセージだった。
「ここでの撮影、そろそろ終わるんだ」
「それは、お疲れ様です」
「この大学で〇〇ちゃんに会って、友達みたいに仲良くなれたこと、めちゃくちゃ嬉しかった」
「………わたしもです」
「そっか、なら良かった」
嬉しそうに、こちらをのぞき込むように笑う平野くんの言葉に、胸が軋んだ。
「俺ね、メンバーのこと大好きなんだ」
今まで、幾度となく聞いてきたその話。
けれど、いつものように楽しそうな雰囲気ではない平野くんの声色に、黙って少し先の地面を見つめた。
「廉とはね、特にずっと一緒にいたから、めちゃくちゃ大事な奴だと思ってるし、あいつも俺のことそう思ってくれてたらいいなって思う」
「………」
「格好悪いところ見せたがらない奴だから、俺にも、きっと〇〇ちゃんにも本音なんて言えなかったのかもしれないけど……あいつ、もうちゃんと自分の気持ちに整理ついてると思うから」
「………」
「だから……廉のこと、幸せにしてやって」
本当に、どこまでいっても優しい人だと思う。
「〇〇ちゃん」
「、はい……」
「好きだよ」
「っ、」
「好きだから、廉と幸せになってほしい」
始めから、わたしと廉くんの為だった。
大切な友達と、その幼なじみであるわたしが普通に話せないなんておかしいと、親身なって話を聞いてくれた。
平野くんは、誰にでもそうじゃないと言っていたけど、そもそも、優しくなかったら最初からわたしの話なんて聞いてくれなかったと思う。
「俺のせいで、余計に悩ませちゃってごめんね、」
「そんなこと、」
「めちゃくちゃ好きだけど、めちゃくちゃ好きだからこそよく分かんだよね」
隣に座っていた平野くんが、そう言ってわたしの顔をのぞき込む。
「優しい俺から、最後の優しさだよ」
「今、〇〇ちゃんの頭の中にいるのは誰?」
今後こそ、嘘は吐けない。
わたしが何を言っても、きっと、平野くんはその答えを知っているから。
「ごめんなさい………っ」
「うん、」
「わたし…っ、」
わたしは、廉くんのことが好きなんだ。