例えそれが世間一般には悪であっても、
誰かにとっては善であるかもしれない。
「名前、いる?」
「いるよ」
夜7時。
慣れた様子で足元に擦り寄ってくる子猫の頭を撫でながら、玄関の方へ顔を向けた。
「ちょっと荷物多いんだよね、開けてくれる?」
「分かった」
扉を開けると、言葉通りたくさんの荷物を持った彼が、そのうちの一つをわたしに預ける。
「なぁに?」
「いつもの」
「いいって言ってるのに」
「口止め料だよ」
「重い、」
「オプションも付いてるからね」
中見てみな?と言われ、袋をのぞけば、そこには可愛らしいロゴの入った箱が一つ。
「ねぇこれ、」
「合ってる?この前見てたやつ」
「なんで知ってるの」
「俺に知らないことなんて無いですよー」
ニヤリと笑って、軽くおでこに触れた唇に目を閉じた。
「飯、もう出来てる?」
「肉じゃがとだし巻き卵」
「最高すぎ」
受け取った紙袋の中にある箱を取り出し、残りを部屋の奥にある引き出しの中へ仕舞った。
中身は、全て同じ紙の束。
「ん〜まっ」
「ほんとに?良かった」
「マジで生き返る」
「おかわりいる?」
「うん」
口いっぱいにご飯を頬張ってうなずく姿に、こちらまで嬉しくなる。
「黒崎くん」
「ん?」
「お疲れ様」
お茶碗いっぱいによそったご飯を出しながら言うと、ジッとこちらを見つめて弧を描く口元は、幸せそうだ。
「デザートにプリンもあるからね」
「名前」
「ん?」
音を立てず、静かにお箸を置いた彼の正面に腰を下ろす。
「ありがと。めちゃくちゃ美味いよ」
分かりやすい。
詐欺師のくせに、ふわりと笑って目を細める姿に、言ってしまいたくなった。