「ん〜、良い匂い」
「でしょ。お腹空いた?」
「うん」
「じゃあちょっと味見してみて。はい。」
完成間近のコーンスープを小皿へ移したところで
、稼働させていたオーブンがちょうどチン、と音を立てた。
「美味しい?」
「うん、さいこう」
「じゃあスープはこれで完成。グラタンも出来たみたいだから、少し向こうで待っててくれる?」
「おぉ〜!」
「ほら、熱いからどいて」
「何で?俺やるけど」
「え、」
「熱そうだし。危ないでしょ」
わたしが持っていた鍋掴みを奪い取り、さも当然のように言ってのけた彼に呆然としてしまう。
「っわ、あっち、!」
「あ、湯気気を付けてね」
「そういうのはもっと早く言ってくれます?」
「ふふ、中も熱いから気を付けて」
「………」
慎重に、そーっと、大きな背中を丸めて中身を取り出す姿に笑ってしまった。
「おー!やっば……美味そう」
「初めて作ったから、味の保証はできないけど」
「そう言ってマズかったことないでしょ」
「ふふ、」
「……う、」
「え、?なに」
「掴まれた………」
「つかまれた、?」
「うん……名前の嬉しそうな顔に心臓掴まれすぎて胸が痛い」
「なにそれ、笑」
胸元を押さえ、そう言って急にうずくまった彼の隣にしゃがみ込む。
「本当わたしのこと好きだね」
「それは名前も一緒でしょ?」
「うん、まぁそうなんだけど」
「なんかムカつく。名前ももっと俺のことで頭いっぱいになってよ」
両頬に手を添えられ、真正面からジッと見つめられて目が合った。
「好きだよ」
「………」
音で言うなら、ずきゅんとか、ばきゅんとか。
確かに頭の中でそんな音がして、しっかり心臓を鷲掴みにされた。
「………撃ち抜いちゃいました?」
「…………撃ち抜かれました」
「ふはっ、照れちゃって可愛いーの」
嬉しそうに、ぎゅっとわたしを抱きしめて笑う彼の背中に腕を回した。
「ほんと可愛いね、好き」
「……やめて」
「また照れてんでしょ?も〜、可愛いんだから」
「やめてってばもう、!」
「ッあはは!」
わたしをいじめる時、わざと耳元で囁く彼には、きっと一生勝てない気がした。