『ん〜……やっぱり降ったか、』
久々の休日。
少し前から雪が降るかもとは聞いていたが、
それより前に予約していた美容室の予約は変更できず。
一か八かで来てみれば、
やはり外は一面の雪景色だった。
「午後には雨に変わるって予報出てるけどまだ止みそうにないね」
『ほんと。せっかく色々買い物しようと思ってたのに、』
「この天気なら人も少なそうだし、頑張って歩けば?」
『雪が止むまで置いてくれたりは……』
「午後も予約あるから早く帰って笑」
『えぇ〜……』
学生の頃から仲良しの彼女が働く美容室は、
都心から少し離れた郊外にある。
都心であればもう少し降り方は弱いだろうが、
そこまで行くのが憂鬱すぎる。
仕方ない。
こうなれば最終手段だと、スマホを開き一時間。
「すいませーん……」
closeの札がかかった扉を慣れた様子で開ける姿に、
持っていたティーカップを置いて立ち上がる。
『しょお!』
「あ、いた」
視線が合うなり、ジーッと目を細めて睨まれた。
「××ちゃん、とりあえずコレお礼」
「え、なんの?」
「〇〇がご迷惑をお掛けしまた」
「あはっ、そんなのいいのに。相変わらず優しいね」
『紫耀ー、わたしには?』
「お前にはねぇわ。急に助けてだけ送ってきやがって」
「え、そんな呼び方したの?」
『うん。グループラインに送って一番に連絡くれた紫耀呼んだの』
「平野くんほんと優しいね……」
「うん。さすがに自分でも思った」
「で?どこ行くの?」
『え、付き合ってくれるの?』
「ふはっ、ここまで来て帰らねーわ。俺も買い物したいし」
『じゃあピアス選ぶの付き合って?』
「ピアス?珍しくない?新しくすんの?」
『ん〜……分かんないけどなんか急に欲しいなって』
「まぁそういうのあるよね。おっけ。とりあえず出すわ」
暖房強めにしてるけど寒かったら言ってね、と
結局優しい紫耀の隣でふかふかのシートに体を預けた。
「あ、そうだ〇〇」
『ん?』
「可愛いよ、新しい髪型」
『、ありがとう』
信号が赤になると同時に、
きちんとこちらを向いて言ってくれる紫耀は
やっぱりどこまでも優しいと思う。
『あ、これ可愛い』
「似たようなの持ってなかったっけ?」
『好みで選ぶと結局ね、』
「じゃあ俺が選んでいい?」
『拒否権はある?』
「ふはっ、行使されないように頑張るわ」
しばらく二人でいくつかの店を回った後
紫耀がよく買い物をしているという店でそう言われた。
自分で選ぶと時間がかかりそうだったので
正直、この提案はありがたい。
「〇〇」
『ん?』
「後で返品絶対無しね」
『え、』
あえて言われるということは、余程奇抜な物を選んだのだろうか。
不安がるわたしを他所に、
嬉しそうに笑う紫耀は、そのまますぐに会計へ進もうとする。
『ちょっと、お金……』
「いいから。普段のお礼」
『いやお礼ならむしろわたしが、』
「あ、大丈夫ですそれで切っちゃってください」
『待って待って違うわたし払うから!』
「はい。一括で」
『聞いてよ!』
もう!と怒るわたしの隣で、
店員さんと笑う紫耀の腕を掴んだ。
『この後ご飯行こう』
「いいよ。何食べる?」
『お肉。絶対わたしが払う』
「無理。女の子にお金払わせるとかあり得ない」
『ねぇちょっとはダサいところないの!?』
真顔で言う紫耀に、逆ギレのわたし。
静かな店内で思いの外響いてしまった声に恥ずかしくなりながら、
仲良いですね、と笑う店員さんの気遣いにもっと恥ずかしくなった。
「そんな不満げな顔しないでよ笑」
『………』
「せっかく美味しいお肉食べれたのに、
〇〇にそんな顔されたら寂しいんだけど」
『またそうやってズルイこと言う……』
店員さんを味方につけ、
結局ご飯のお会計も済ませてしまった紫耀に頬を膨らませる。
「も〜、またそんな顔して。ピアスあげないよ?」
『それはやだ』
「ならご機嫌直して。はいこれ」
『……ほんとに貰っていいの?』
「いいよ。〇〇に買ったんだから」
きちんと包装されたプレゼント仕様の紙袋。
中を開けると、小ぶりな可愛いらしいデザインのピアスと
もう一つ、シンプルなシルバーのピアスが入っていた。
『2つ、?』
「うん。一つは〇〇に似合いそうなので、もう一つは俺とお揃い」
『え、』
だからシルバーの方は片方しかなかったのか。
箱を開けて感じた違和感をすぐに解決してくれた紫耀の方を見ると、
確かに、わたしが貰った物と同じデザインのピアスを持っていて。
「せっかくだからさ、今付けない?」
言われて、今日はちょうど何も付けていない耳に髪をかけ、
にっこり微笑む紫耀の言葉にうなずいた。
「〇〇のは俺が付けるわ」
『ん、ありがとう』
互いの耳に一つずつ。
光りを反射して、キラリと光るピアスに嬉しくなった。
「こんな天気悪い中休み返上して車出してやったんだから、
これくらいいいでしょ」
眠る彼女に呟いて、
その無防備な頬を撫でたことは、俺だけの秘密。
平野「最近だとちょうど昨日雪の中〇〇に呼び出された
(取材日前日は都内全域で大雪警報)」
橋「うわ、あの例のメッセージね」
平野「そう。マジで良くない」
———例のメッセージとは?
永瀬「この子酷いんすよ。メンバーのグループトークに
突然助けてだけ送ってきて、一番最初に連絡くれた紫耀を呼び出
すっていう」
岸「あれめっちゃ心配したよな?!」
神宮寺「そう。多分紫耀と連絡ついたからだろうね。し
ばらく"どうした?"って送っても返事来なくて」
橋「30分くらいマジで大混乱だったからね?」
△△「あはっ、ごめんなさい笑」
岸「しかもその後ちゃっかり二人でデートしてんすよ」
神宮寺「そう!紫耀からのこっちは大丈夫マウント」
平野「なにそれ笑」
神宮寺「一緒に買い物してるとは言わずに〇〇の後ろ姿だけ送っ
て来たじゃん」
永瀬「あれな〜。くっそ腹立ったわどこの匂わせ女よ」
橋「で、極め付けはお揃いのピアスね」
神宮寺「ほら見てくださいこれ!(△△の髪を耳にかけながら)」
△△「んふふ」
平野「誰に買ってもらったんだっけ?」
△△「紫耀」
「「はいマウント〜!笑」」