幼なじみは、
少し見栄っ張りで一生懸命な
同い年の男の子だった。



































「名前」
『ん?』
「お前なんか疲れてねぇか。顔色わりぃけど」
『そんなことないよ。ありがとう』

無駄に広い送迎車の中、心配そうにこちらをのぞき込む彼に笑顔を向ける。

『それより、晴は大丈夫?』
「?何がだよ」
『ご両親、今朝一緒だったんでしょ』
「……小林か」

伝えた言葉に、返事はない。

いつもこうだ。
自信たっぷりで堂々としているように見えて、実は人一倍繊細なところがある。

幼い頃からずっと見てきたのだ。

難しい顔をして黙り込む晴に、もう一度笑って声を掛ける。

『そういえばね、明日永徳の近くで撮影なんだ』
「そうか。仕事、頑張ってんだな」
『うん。だから、終わったら会いに行ってもいい?』
「永徳にか?」
『そう。ダメ?』

少しズルイかもしれないが、晴がこの聞き方に弱いのは知っている。

たとえ親が決めた婚約者だからといって、そこに愛がないわけじゃない。

むしろ、わたしは晴のことが大好きだ。

「終わったら連絡しろ」
『うん』
「お前は来なくていい。俺が迎えに行くから」
『ありがとう』

言うと同時に、わざと視線を逸らして外を見つめるのは、きっと彼が照れているから。

『晴』
「んだよ、」
『なんでもない』
「はあ?」
『呼んでみただけ』

ふふっと笑えば、不満そうに眉を寄せた晴が舌打ちをする。

しかし、それが怒りの現れではないことも知っているので、焦ることはない。

『じゃあ、わたし先に行くね』
「……おう」
『送ってくれてありがとう』
「あぁ、気付けろよ」

車を降りると、最後はきちんと声を掛けてくれる。

不器用ながらも、そんな優しい彼に、わたしはずっと恋をしていた———。
















(幼なじみのモデルさん)