「〇〇さんちって、この辺っすか」
「ううん、」

じゃあ何でこんな所に?
聞いてしまえば、一気に話の核心をついてしまう気がして、言葉が出なかった。

「岸くんはさ」
「はい」
「彼女が出来たら、どうする?」
「え、」
「恋人同士だったら、なんでもお願いしちゃう人?」
「お願い……?えっと、そのお願いの意味がよく分かってないんすけど、そうっすね……もし彼女がいても、あんま縛りたくはないんで、お願いって言っても、必要最低限っすかね、?あ、でも嘘はつかないでほしいってお願いするかも…………え、?あれ、これ合ってます?」
「うん、そっか。大丈夫、ありがとう……」

変なこと聞いてごめんね、とぼんやり外を眺める〇〇さんの表情は分からない。
けれど、直後小さく鼻を啜る音が聞こえて、ドキッとした。

何を言えばいい、?

こういう時、出来る男ならどうする。
〇〇さんの彼氏なら、彼女にどうしてあげるだろう。

「〇〇さん、お腹空きませんか」
「………ちょっとだけ、」
「靴買って、ご飯行きますよ」

彼女が嬉しそうに笑う顔を思い浮かべた時。その手には、いつも俺が差し入れた何かがあった。


「さっせん、こんな安上がりな所で、」
「ううん、全部美味しそう」
「何食べます?俺は後で、」
「ねぇ岸くん、一緒にこれ食べようよ」

どこにでもあるファミレスの、座敷席。

ダランと酷使した脚を伸ばしながら、楽しそうに〇〇さんが指差したメニューは、時間制のしゃぶしゃぶ食べ放題。

「今日はね、なんかたくさん食べれそうなんだ」

今まで、ずっと何かを我慢していた彼女の口から、初めて聞いた本当のこと。


嬉しそうに、たくさんのメニューが並ぶタッチパネルを触りながら、岸くん、お寿司もあるよ!と笑う彼女を、このままずっと笑わせてあげたいと思った。


「サイドメニューも頼んでいい?」
「食べ放題なんすから、好きなだけ頼んでくださいよ」
「冷やしトマト食べる?」
「はい」
「は、!やだうそ、どうしよう岸くん、だし巻き卵もある、」
「好きなんすか?」
「うん、大好き」

ズルイ………。

その笑顔で大好きはずるいでしょうよ。

「残念ながら蕎麦はないけど、岸くんも好きな物頼んでね」
「はい」