「岸くん」
「んー?」
「背中、一発叩いてくれない?」
「は?」
キラキラ輝くスポットライト。
煌びやかなステージ。
たくさんの歓声。
見慣れたはずの大好きな景色が、こんなにも恐ろしく見えるのは、どうしてだろう。
「足、震えちゃって、」
「………」
「あはは、このままだと、歩き方も分かんない」
そもそも、歩くって、どうするんだっけ。
極度の緊張で固まってしまった体は、とても熱いのにはずなのに、冷え切っていた。
指先が凍えて、氷みたいだ。
「手、貸して」
「手?」
「うん」
目の前に差し出された大きな手に、自分の手を重ねる。
「目瞑って」
「、はい」
「深呼吸して」
「ん、」
「そのまま」
重なった手が、ゆっくりと包まれる。
「大丈夫」
「……」
「お前には、俺たちがいる」
「………」
「怖くない」
「………うん」
「ぜってー大丈夫だから」
「うん、」
包まれた手が、温かくなる。
指先から、じわじわと戻る手の感覚に、ホッとした。
「なにしてん、二人で」
「ん?おまじないかけてた」
「おまじない?」
「そ。なあ?〇〇」
わたしがこの世界に足を踏み入れた時から、ずっと、こうして笑ってくれた彼の言葉は、何よりの励みになる。
そうだ。一人じゃない。
わたしには、みんながいる。
グッと強く握り返された手に、力を込める。
「一緒に、頑張るから」
「岸くん、」
「よろしくな、〇〇」
これが、わたし達の始まり。