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「待て、アルバート…
その者は、一体、どういう者なのだ?」

「陛下も何度もお会いになられたことがございます。」

「なんだと?私はこの者に会ったことがあると言うのか?」

陛下は、カンナの顔をまじまじとみつめられたが、わからないご様子だった。



「はい、この者はカンナです。
私がずっと可愛がっていた、あのカンナなのです。」

「カンナ…この者がカンナだと?
どういうことだ?」

「はい、カンナは昔から体が弱く、病魔をふりはらうために子供の頃から男装させられていたそうです。」

「そなたはそのことを知っておったのか?」

「はい、以前から知っておりました。」

「なんと……」

陛下は、放心した様子で、私をみつめておられた。
病魔云々というのは、咄嗟に思い付いた作り話だ。
いい加減な話だが、陛下は信じて下さっているようだ。
助かった。



「アルビー!どういうことなの!?
嘘よね?そんな人と結婚するなんて、なにかの冗談よね?」

人混みの中から、突如としてシュリが現れ、感情的にそう言った。



「いや、嘘ではない。
私は、この者と結婚する。」

私がそういうと、シュリは丸い涙をぽろぽろとこぼし、その場から去って行った。
胸は痛むが、変に期待をさせるのも却って酷だと思い、正直に答えたのだ。
シュリは、私にとって、とても大切な人だが、恋愛の対象ではない。
その気持ちは、変えようがなかったのだ。



「アルバートさん…私……」

「良いな?私と結婚してくれるな?」

カンナの瞳から、涙が溢れだす。
私は、その綺麗な涙を指で拭った。
じっとみつめる私の前で、カンナは静かに頷いた。
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