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「あんたはそこで寝ろ。
俺はここで良いから。」

「あら、そんなこと、別に気にしなくて良いのに…」



俺たちは、寝室も一緒だ。
しかし、俺たちは本当の恋人同士ではないし、アンジェラは俺のカモというわけでもない。
だから、俺は、長椅子で眠った。



長年、結婚詐欺師をして来た俺だ。
愛がなければ女を抱けないなんてことはないのだが、アンジェラとはなぜだかそんな気にはなれなかった。
彼女はとても綺麗だし、魅力的な女なのに、どうしてだろう?



彼女は、使用人たちにも優しかった。
中でも、医師のマクソンとは良く言葉を交わしていた。
マクソンは、中年の真面目そうな男だが、どうやらアンジェラに気があるようだ。
まぁ、男なら誰だって、アンジェラみたいな女に優しくされたらなびいてしまうだろうが…



きっと、何か魂胆があるのだろう。
俺には、それが何なのか、見当も付かないが。



俺たちの屋敷にわざわざエドワード王が訪ねて来ることがあった。
公務のついでだとか、なにかしら理由をつけてはいたが、きっと俺たちの様子を見に来たんだ。
なぜ、そんなに俺たちのことが気になるのか?
俺には、相変わらず、その訳がわからなかった。
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