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「カンナ…どうかしたのか?」

「い、いえ…何も……」

朝食をすませてしばらくすると、ネイサンさんとオスカーさんが出掛けて行った。
あとに残されたのは、私とアルバートさん。
昨夜の想像のせいで、アルバートさんへの印象が変わってしまった。
ふたりっきりでいるのが落ち着かない。



「カンナ…外に出掛けないか?」

「……はい。」

部屋にふたりでいるよりは、外の方が良い。
私は素直に返事をした。



「良い天気だ。
そういえば、こちらに来てからまだ雨が降らないな。」

「……そうですね。」

なんだか緊張してうまく話せない。
だって、なんか怖いんだもん。
アルバートさんは、いつも通り優しいのに…
しかも、昨夜のことはただの想像…
現実かどうかわからないっていうのに、でも、すっかりビビってる。



「カンナ…あそこに古着屋がある。
見に行こう。」



(あ……!)



急に手を握られて、私はびっくりしてその手を振り払ってしまった。



「あ…すまない。
別に子ども扱いしたわけじゃないんだ。
私には妹がいるので…つい…」

アルバートさん、なんだかとても決まりの悪い顔をしている。



「僕こそすみません。
ちょっとびっくりしただけなんです。」

そう言って、私は頭を下げた。
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