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「やはりそう思われますか。
それで、その者が言うには、昨夜からどうも様子がおかしいというのです。」

「おかしいとは、どういうことだ?」

「部屋にその男がいないようだ…と。」

「何?」

「それと、今朝方、男の世話をしていた者が、その兵士に誰かこの窓から出た者はいないかと聞かれたそうなのですが、それが尋常ではない様子だった、と。」

「では、男が逃げたということか!?」

「それはまだわからないのですが、兵士も少し気になって部屋の中をたまにのぞいていたらしいですが、一度も男を見かけなかったと言うのです。」

アルバートさんは、腕を組みゆっくりと頷いた。



「ただ、おかしなことに、もしも男が逃げたのなら、もっと騒ぎになるはずですが、そういうことはないようです。」

「……隠しているのだ。」

「え?」

「男が逃げたとなると、エドワード王が激怒することはわかっている。
いや…そんなことが発覚したら、その者の命さえ危うい。
おそらくは、男の世話をしていた者が隠しているのだろう。」

ネイサンさんは大きく頷いた。



なんだかえらいことになってるみたい。
まさか、アルバートさん…その男を探して殺すつもりなんじゃ…
怖ろしい想像に、私の体は小さく震えた。
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