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「それで…男の容姿についてはわかったのか?」

「はい。年の頃は20代半ば、穏やかで端正な顔をしており、一見するとどこかの貴族のような男だったと申しておりました。
髪の色は明るい茶色、背は高いということでした。」

「貴族か……」

アルバートさんは、何かを考えるように遠い目をしていた。



「もしも逃げたとしたならば、今頃どこにいるのでしょう?」

「おそらく、脱出したのは昨夜だろうな。
昨夜は招待客でごった返していた。
馬車も何十台も来ていた…
男が貴族だとしたら、もしかしたら、昨夜の招待客の中に、手引きをした者がいるのかもしれないな。」

「そうですね。昨夜の混乱に乗ずれば、確かに逃げられそうですね。」

「しかし、馬車で逃げたとなると、探すのはとても難しいぞ。
いや…残念だがみつけるのは不可能だな。」

確かにそうだよね。
昨夜は、たくさんの招待客がいて、馬車もたくさん来てて…
どの馬車に乗ったかもわからないし、その馬車がどこに向かったなんて、もちろん誰も気にも留めてなかったし、しかも、帰ったのは深夜だし…
そんなの絶対にみつけられるはずがないよね…
まぁ、みつからないでくれたら、アルバートさんも嫌な役目をやらないで済むわけだから、私としてはその方が嬉しいけど…
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