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「お妃様はモルドの方だとお聞きしましたが、どちらのご出身なのですか?」

「わ、私は……ルーランです。」

「ルーランですか。最後までモルガーナに敵対した北の大国ですな。
それは素晴らしい。」

モルドには偏見を持つ人も少なくないと聞いていたから、ドキドキしながら答えたのだけど、意外とみんな好意的だった。
もしかしたら、ルーランという国のおかげなのかな?



「その時の戦乱で、彼女は親を亡くしました。」

「そうでしたか…それはお気の毒に…」

アルバートさんは、ネイサンさんから聞いた話を真実だと思ってるから、私の代わりに答えてくれた。



「ルーランの貴族のお家柄で?」

「はい、そうです。」

これは嘘だけど、私は王子様の妃という立場だから、貴族ってことにしたんだろうな。
私は後ろめたさから自然と俯いた。



「アルバート様とはどちらで会われたのですか?」

「ある時、私とオスカーとで出かけていた時に、賊に襲われまして…
その時に、加勢してくれたのが、彼女の兄だったのです。
ふたりが、モルドからこちらへ来たばかりの頃のことでした。」

「ほう、兄上は剣術がお得意なのですな。
それは、頼もしい。」

いろいろな人から、いろいろなことを聞かれる。
だいたいのことは、ネイサンさんと相談してたけど、本当のことが話せないだけに、質問が来るたびにひやひやしてしまう。
とりあえず、私が記憶を失ってるってことだけは、秘密にされているのだけれど。
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