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(焚火って、いいな…)



日が沈むとあたりは急に暗くなり…
アルバートさんは、そこらから薪を拾い集めて来ては、火を焚いてくれた。
これはこれで、けっこう良い。
なんていうのか…とてもロマンチックだ。



それに、この世界は、私のいたところよりもずっと夜空が明るい。
船の甲板で初めて見た時は、本当に驚いた。
パパの実家に行った時も、すごく星が綺麗だって思ったけど、それよりももっと数が多い。
満天の星っていうのは、きっとこういうことを言うんだろうね。



「カンナ…寒くないか?」

「はい、大丈夫です。」

焚火のおかげで暑いくらいなのに、どうしてそんなこと聞くのかな?って思ったけど…
きっと、私が宿屋で寒がりだから服を着たまま寝るって言ったせいだね。



「た、焚火は暖まりますね。」

「寒かったら言うんだぞ。」

「はい。」



夕食に缶詰とパンを食べて、それから少しお酒を飲んだ。
ここに来てから、毎晩みたいに飲んでるね。



「アルバートさん、この山には良く来られたことがあるんですか?」

「あぁ…そうなんだ。
実は、私は子供の頃、けっこう体が弱くてな。
山歩きは体を鍛えるのに良いと言われたが、私はなんせ体力がなかったから、山が嫌いだったんだ。
そしたら、ある日、モルガン王が私をこの山に連れて来て…
私はとても不愉快だった。
山に登るなんて、ただ疲れるだけなのに…
体力がないことを知っていて、わざと連れて来たんだって。
だけど、あの夕陽を見せられた時…私は、まるで命を吹き返したような気分を感じた。
頑張れば、私はこれほどに美しい風景をいつでも見られるんだって…そう気付き、自ら、体を鍛えるようになった。
そのおかげで、今は、この通り、元気になれたんだ。」

そう話したアルバートさんの顔は、とても晴れやかなものだった。
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