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山を歩くのは、平地を歩くのよりずっと疲れる。
その事実をいやという程、思い知らされた。
アルバートさんは、意外と体力あるんだね。
途中で何度も休憩したのは、私を想ってのことだろう。
アルバートさんひとりなら、きっともっと早く進めるはず。
「今夜はこのあたりで泊まろう。」
(ええっ!?)
「こ、今夜は山に泊まるんですか?」
「大丈夫だ、この山には猛獣はいない。」
「え……」
確かに、猛獣も怖いけど、他にもなにかと心配だよ。
ほら…山賊とかも出て来るかもしれないし…そもそも、山の中で寝るっていうこと自体が、不安だよ。
そんなこと、したことないし。
「カンナ…ここに座りたまえ。」
「……はい。」
何だろう?と思っていたら…
しばらくして、山波の間に真っ赤な夕陽が落ち始めた。
空を真っ赤に染め上げていくその様は、感動的に美しくて…
「……綺麗!」
「そうだろう?
こんなに綺麗な夕陽が見られる場所は、そうはないぞ。」
二人で並んで座って、沈んでいく夕陽を見て…
ただそれだけのことだけど…このまま時が止まれば良いと…
なぜだか私は、そんなことを考えてしまった。
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