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「王妃……」

「天下のエドワード王が、なんてざまなのかしら…」

「え……?」

王妃の言葉に、余は放心した。
我が耳が信じられなかったのだ。



「ふふふ……はははは……」

アンジェラの笑い声は、どこか狂気染みて聞こえた。
いつもとはまるで別人のようだ。



「王妃…なぜそのように笑うのだ。
何がおかしい?」

余がそう言っても、王妃は笑うことをやめなかった。
そんな王妃の真意さえわからずに、余は、ただただ、その笑いを聞いていただけだ。



「愉快…本当に愉快だわ。」

王妃は、笑い過ぎてあがった息を整えながら…目尻にたまった涙を拭った。



「何が…何が愉快だと言うのだ?」

「今の憔悴しきったあなたの姿が…」

そう言って、王妃は小さく肩を揺らした。



「どういうことだ?」

「あら?まだわからないのかしら?
あなたは頭の良い人かと思っていたけど、そうでもないのね。」

王妃はいつもとは明らかに違った。
常に控えめで従順な王妃が、わざわざ余にこんなことを言うなんて…
その変化に、腹が立つよりも不思議でならなかった。



「王妃…どうかしたのか?
何かあったのか?」

そうだ…王妃は、きっと此度の叛乱の報せで気が動転しているのだ。
そうとしか、思えなかった。
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