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「なんと、そういうことだったのか。」

信じられないことだけど、ネイサンさんはルーランの王家の者だった。
しかも、お父さんは王様。
つまり、アルバートさんと同じく、王子様だったってことだ。
ネイサンさんがまだ小さい時に、祖国ルーランはモルガーナに攻め落とされ、王様を初めとする大半の者は殺された。
だけど、クローゼットに隠されていたネイサンさんだけが助かって、その後は伯父さんの元で育てられたらしい。



酷いじゃない。
ネイサンさん、そんなことは一言も言ってくれなかった…



「ジョセフが私を呼びに来たのは、叛乱を起こすためでした。
叛乱は嘘のようにうまくいきました。
モルガーナから派遣されていた者たちを排除するだけで良かったのですから。
その後、モルガーナから軍隊が送られて来ましたが、それも簡単に追い返すことが出来ました。
数も少ないし、こちらは軍隊が送られるであろうことは見越して備えることが出来ませんでしたから。
多少、城が壊されはしましたが、幸い、我が兵が血を流すことはほとんどありませんでした。」

「そうだったのか…それは良かった。
しかし、なぜ教えてくれなかったんだ。
君が王家の者であることを…」

「そんなこと…言っても仕方がないと思ったのです。
ルーランは、モルガーナのものとなっていましたし、家族は、皆、殺され、そんな私が『実は、私はルーランの王子だ。』なんて言ったところで、何かが変わったでしょうか?」

そう言ったネイサンさんの表情は、今まで見た中で一番暗いものだった。
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