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「起きろ!」

肩を揺り動かされ、俺は目を覚ました。
馬車が止まったのは、宿屋の前だった。
どのくらい眠っていたのかはわからないが、ざっと見たところ、どうやら俺の知らない町のようだった。
部屋に入ると、俺は縛られていた縄を解かれた。
だけど、扉の前には、剣を携えた屈強な男たちが二人。
丸腰の俺には、逃げるのは無理だろう。



奴らは、俺に食事をさせてくれた。
調子に乗って、酒はないのか?と言ってみたら、すぐに持って来てくれた。
しかも、普段、俺が飲んでいるものよりもずっと上等なワインだ。



確かに、俺はそれなりに大切にされているようだ。
なぜだ?
それは、きっと、俺に、なんらかの価値があるからだ。



「なぁ…俺を探してるのは誰なんだ?」

「そんなことは、知る必要がない。」

「はいはい、そうですか…」



最初は、今までに俺が騙した女たちの誰かかと思った。
だが、どうやら違うようだ。
この男たちは、鎧等は付けていないが、ただのごろつきとは毛色が少し違う。
どちらかというと、兵士に近いような気がする。



私兵を持っているとなると、貴族か?
もちろん、貴族の女を騙したこともあるにはあるが、私兵を持ってるような者はいなかったはずだ。
それに、俺には自信がある。
うまく騙し通したという自信が。
恨まれることなど、あるはずがない。
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