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(……お腹空いたな。)



ひとしきり、泣いたり叫んだりしてたら、諦めの境地に達したのか、ようやく気持ちが少し落ち着いて…
涙を拭っていたら、お腹の虫が鳴いて…
今の私は実体がないはずなのに、お腹が空くのが不思議でたまらなかった。
ゆっくりと立ち上がる。



(あ……)



そうだ、もしも、私が今、魂だけの状態になってるのだとしたら、行きたいところに瞬時に行けるんじゃないかって、そんなことを思いついた。
きっと、そうだ!
私は無意識に、子供の頃に行ったパパの故郷のことを思い出して…
だから、ここに飛んで来たんじゃないだろうか?
そう考えれば、辻褄が合うもの。



とにかく、家に戻ってみよう…!
いや、違うな。
家族はみんな病院にいるはずだ。
あ…でも、どこの病院にいるのかわからない。
じゃあ、やっぱり、家だな。



私は、再びその場に腰を降ろした。
そして、固く目を閉じて、一心に願った。
『家に帰りたい』と。



きっと、目を開いたら、私は家にいるはず。
しばらく祈った後…私は恐る恐る目を開いた。



「え……!?」



そこはさっきの庭だった。



どうして??
魂になったら、瞬間的に好きな所に行けるんじゃないの!?



私はもう一度目を閉じ、家に帰りたいと願った。



だけど、何度やっても、私はその場所から移動することはなかった。
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