「演習、随分楽しそうだったなあ、僕も参加したかったよ」
「伊作が出たら随分荒れただろうな」
「伊作先輩と立花先輩がいらっしゃったら、爆破爆破で砦が崩落して面白かったかもですね」
「留三郎と瑠璃が巻き込まれるのが目に見えているな」
「不運は脱したつもりなんですけど」
「その怪我じゃあ、脱不運はまだ無理だねえ」
「善法寺先輩、立花先輩。お茶でもどうぞ」
「ありがとう。おや楪。自分たちの分も持っておいでと言ったろう」
「わたしたちの分は雷蔵が慎重に持ってきます。……悩み抜かれた御茶菓子とともに」
「あはは、すごく迷ってそう。わたし羊羹がいいな」
「瑠璃、お前怪我人の癖に甘味は食えるのか?」
「もちろん食べます」
「そういや瑠璃ちゃん、変装なんかいつ仕込んでいたんです」
「夜なべして作ったんだよ。牡丹の綺麗な髪を再現するのが難しくて、立花先輩にも沢山協力してもらっちゃった」
「そうなんですか?」
「この不器用には人形を数体ダメにされた。次の予算委員会ではその分もしっかり請求させてもらうぞ」
「それは…潮江先輩が激怒するのでどうか内密に……」
「牡丹も、こっそり煎じていた薬は役に立ったのかい」
「善法寺先輩のおかげで、大活躍でした」
「牡丹、本当に容赦なかったよね。わたしにも教えて!」
「お前じゃあまだ扱えない薬だよ」
「今後の成長を見越して先取りさせてください」
「おい伊作、不運を炸裂させないよう、離れで頼む」
「あはは、じゃあ後でわたしから伝授しましょうか」
「失礼します。おや、皆さん随分楽しそうですね」
「意外と早いな。迷い癖は落ち着いたのか、不破」
「三郎たちに勧められるがまま、全部持ってきちゃいました」
「学級委員長委員会のお菓子箱、豪華! 塩羊羹がある」
「私は落雁をもらおう」
「僕も羊羹にしようかな」
「わたしは金平糖をいただきます」
「喜んでもらえて良かった。あとで礼を言ってこなきゃ」
「ん、おいしい。……あの演習、先輩方がいらっしゃるうちに、もう一度やりたいですね」
「ほう。牡丹がそんなことを言うとは珍しい。次は私も参加させてもらいたいものだ。あいつらばかり姫君と同席するのは憎らしい」
「僕もぜひ。三郎の仇も討ってやりたいですし」
「次はほんとのお姫様役がいいです。常に抱えられているなら、また参加してもいいですよ」
「それなら僕も参加するよ。小平太に投げられた瑠璃を拾ってやらなくちゃ」
「バレーボールじゃないんですよ!」
保健室から笑い声が漏れる。珍しい顔触れに後輩たちが襖の隙間から中を覗いていると、仙蔵が小さく手招きをして、茶菓子を握らせた。わぁ、と歓声を漏らして、忍びのたまごたちが散っていく。
五人は開け放された軒先から空を見上げる。空はからりと晴天、涼しい風は、続く季節の気配をまとっている。花が咲き、風に舞い、色を変え、雪が溶ければ、春が来てしまう。
四季の巡りはなんと早いことだろう。
惜しい。と牡丹は柄にもなく思った。外を眺めていた瑠璃と目があって、どちらともなく手を握る。永遠などあるわけがないと知っているからこそ、惜しむことができるのだ、
この手を放すときは遠くない、けれど、それでいい。
いつか思い出すのだ。たまごであった日々のことを。
きれいなものをぜんぶ集めて披露した、あの宴のことを。
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