「ほ、本当なのか!?」

「……あんたには負けたわ。」

信じられないその返事に、俺は歓声を上げ、エリーズの身体をきつく抱き締めた。









(今日は最高の一日だ…
俺は世界一の幸せ者だ…!)



俺は熱くなった心の中で、二年前のことを思い出していた。
そう、エリーズに初めて出会った日のことを。
ふと立ち寄った酒場の片隅にいたエリーズは、まさに掃き溜めに鶴。
エリーズの周りだけが俺には輝いて見え、なぜ、エリーズのような女がそんな場所にいるのか、とても不思議な気がした。



まさに一目惚れ。
まさに運命の出会い。
俺は、まるで魔法にかけられたようにエリーズの前の席に腰を降ろした。



「こ…ここ、良いかな?」

柄にもなく照れてしまい、震える声を懸命に抑える俺に、エリーズは冷やかな視線で俺を一瞥して言った。



「どうぞ。
私、ちょうど帰るとこだったから。」

そう言ったと同時に彼女は席を立った。
長い金髪がさらりと揺れる。
その途端、周りの席からわきあがった笑い声。



(畜生〜!)



馬鹿にされた。
恥をかかされた。
そのことで感じる怒りと同時に、俺は彼女のあまりにもクールな態度にしびれてもいた。
俺のことなんて、微塵も気にかけていないっていう強気な姿勢。
今まで、それなりに女にはモテると思いこんでいた俺のプライドを見事なまでにぶち壊してくれたことが、俺の情熱をさらに燃えあがらせてくれた。




(こんなことで諦める俺じゃないぞ!
絶対に、こいつを俺の女にしてみせる!)



俺はそう誓いを立てた。



それから、俺は彼女についての話を訊き歩いた。
なんと!彼女は俺と同じトレジャーハンターだということだった。
とても意外な気がしたが、そう感じているのは俺だけではないようだった。
彼女の雰囲気からしても、全くそんな風には見えない。
見てくれから想像すると、没落した貴族の娘とでもいったところか…
だが、現実に彼女はやり手のトレジャーハンターで、危険な場所ももろともせずに出掛けて行っては、お宝を手に入れているということだった。



「おっかしいなぁ…俺はけっこう長いことこの商売をやってるが、彼女の噂は聞いたことがないぜ。」

「そりゃあ、そうだろう。
あの女はつい数ヶ月前に北の大陸からここへ来たばかりだって言うからな。」

「他所者か…道理で……」



それ以外の彼女についての情報を知る者はいなかった。
彼女について知られているのは、北の大陸から来た事と、エリーズという名前、そして、男にも負けない体力と腕っ節を兼ね備えているということだけだった。



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