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「……なんだ、おまえ…
まるで死人みたいな顔をして…」
エリーズと別れた俺は手早く荷物をまとめ、エルフの元に戻り、すぐさま町を離れた。
気を失っていたほんの束の間しか眠ってないにも関わらず、俺は少しも眠くなかった。
思い掛けないことが起き過ぎて、神経が高ぶってるんだろう。
「こんな風になるのも当たり前だろ!
俺は女にされて、しかも、せっかくうまくいきかけた所だってぇのに、愛するエリーズとは離れ離れに…
畜生ーーーー!」
「……なんて声を出すんだ…」
エルフは両耳に手をあてがい、眉間に皺を寄せて俺を睨み付ける。
こんな酷い目に遭わされたんだ。
大声上げるくらいのこと、なんだってんだ!
俺も負けじとエルフを睨み返してやった。
「良いか、今のおまえは女なんだぞ。
少しは……」
「おまえ、おまえって言うな!
俺にはステファンって名前があるんだ。」
俺がそう言うと、エルフは口許に手をやり肩をすくめた。
「女のおまえにはえらく不似合いな名前だな。」
「そう思うんなら、さっさと俺を元に戻しやがれ!」
「……アレクシスがみつかればすぐにでも戻してやるぞ。」
エルフはそう言って口端を上げた。
それは勝ち誇ったような…俺を小ばかにしたような微笑…
こんな奴とこの先一緒に旅をするのかと思うと、俺は頭がどうにかなりそうだった。
「……ユリウスだ。」
「……何だって?」
「私の名はユリウスだと言ったんだ。」
聞いてもないのに、奴は自分の名を名乗った。
おかしな奴だ……最初はそう思ったが、そのうちはたと気付いた。
(そういえば、こいつにはこの世界で頼れる者なんていない。
強いて言えば俺だけだ。
あんな憎まれ口ばっかり叩いているが、心の底では俺ともっと仲良くなりたいとか考えてるんじゃないだろうか?)
そんなことを考えると、妙にエルフのことが気の毒に思えて来た。
俺には、アレクシスを逃がしてしまったという負い目もある。
(ちょっとは優しくしてやらなきゃな…)
俺は、ユリウスの前に片手を差し出した。
「そうか…よろしくな、ユリウス。」
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