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「エリーズ!起きてるか!?
エリーズ!」

俺は、エリーズの泊まってる部屋の扉を叩いた。



「……誰?」

程なくして、扉の向こう側から聞きなれたエリーズの声が聞こえた。



「俺だ!」

「……俺?」



(あ…そうだった…)



今の俺は、今までの男の俺じゃないってことにはたと気付き、慌てて言い直した。




「わ…私…ステファンの妹の…」

「……ステファンの?」

俺がそう言うと、エリーズはやっと鍵を開けてくれた。
まだ起き立てらしく、ガウンを羽織り、全くのすっぴんで髪も乱れていたが、それがまた妙に色っぽい。



「何?私の顔になにかついてる?」

「え?……あ、そうじゃねぇんだ……じゃなくて、そうじゃないんです。
に、兄さんが言ってた通り、綺麗な人だなと思って…」

俺がそう言うと、エリーズの顔は不機嫌そうな表情に変わった。
何か気に障ることでも言ってしまったのか、それともこんな朝早くに叩き起こしたのがまずかったのか…



「……そんなことより、こんな朝っぱらから何なの?
ステファンに何かあったの?」

「あ、そ、そうなんです!
じ…実は、家族にものすごく大変なことが起きて、私ではどうにもならないので兄さんを呼びに来て…
兄さんはその用が片付くまで帰って来れませんが、なるべく早くに戻って来るからしばらくの間待ってて欲しいと、あなたに言付を頼まれて…」

話しながら自分でもいやになって来る程、ひどく曖昧な言い訳だった。
だが、今はこのくらいのことしか思いつかず、俺はエリーズがどんな反応を見せるかと、どきどきしながら彼女の返答を待った。



「……そう。
わかったわ。」

「え……それだけですか?」

あまりに素っ気ない彼女の言葉に、俺は思わずそう問い返していた。



「それだけって…他になにかあるの?」

「い…いえ…そういうわけでは…」

「じゃあ、もう良いわね?
私まだ眠いから失礼するわ。」

冷たく扉が閉められようとした時、俺はたまらなくなってエリーズの身体に抱きついた。



「な、何なの!?一体…」

彼女が驚くのも無理はない。
エリーズは俺を引き離そうとしたが、俺は力を込めてエリーズの身体にしがみついた。
これからしばらく…もしかしたら、考えているよりずっと長い間、会えないかもしれないんだから。



「エリーズ…兄さんが…あなたを誰よりも愛していると…
そして、兄さんの代わりにハグを…」

そう言った途端、エリーズは俺の瞳をじっとみつめ、その腕から抗う力が抜けた。



(ありがとう、エリーズ…
愛してる…世界で一番愛してるぜ…)

口に出せない想いの丈を、心の中で俺は何度も叫び続けた。


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